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コロナ禍になぜ、立ち上がったのか?

一方で、緻密さも米田さんの料理の真骨頂。大好きな読書が料理に対しての気づきを与えてくれた。
「哲学や宗教、自然科学や経営本など、興味の赴くままに読みあさっていました。自分の料理について考えたときにすべてが結びつきました。どの事象とも類似点だらけだと。そのとき、料理は森羅万象を表現できる、万能な伝達手段だと思えたんです」。

そこで時計と料理について類似点を聞いてみる。
「見えない概念を空間に見せる時計は、細かい部品を組み上げた途端、命が宿る。同様に、完璧に均整が取れた料理は、皿の上に作り上げた瞬間、生命を宿したように輝くんです。どこか似ていませんか?」。

最後に、コロナ禍で飲食業界に大ダメージを与える危機に立ち上がった動機をうかがった。
「もちろん、使命感もありました。何事も伝えることを諦めたくない。署名で全国の人々へ、知人を伝って政府へと、あらゆる方向から働きかけました」。
米田さんの周りに多くの人が集った結果、活動が実り、補助の方向へと舵が切られた。それも料理が結びつけた人と人の輪。「ゆくゆくは、宇宙で料理を作りたい」と料理の可能性を追いかける米田さんの、未来への思いに終わりは見えない。
 
久間昌史=写真(料理) 松本あかね=写真(人物) 髙村将司=文


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