ベルルッティの「ダイストレイ」と「ダイスゲーム」
なんと紀元前8世紀頃のアッシリアの遺跡からも発掘されるなど、サイコロのルーツは古代にまで遡るんだとか。今では数多のゲームの土台ともなるが、今作はベルルッティが誇る“土台”である極上素材、ヴェネチアレザーが贅沢に使われた。美しき経年変化を想像するだけで、それこそ時のロマンに浸ってしまいそう。
同素材のトレー、ローラーの内側にはそれぞれゴートスキンが張られ、エボニー材の漆黒のサイコロを振るたびにこれまた美しき響きが。グラスを静かに鳴らす氷とのハーモニーには悶絶必至、とはいえくれぐれも思考停止なきよう。
エルメスの「チェス“サマルカンド”」
きめ細かなブライドルレザーのバンドがぐるりと回る、滑らかなマホガニー材のボックス。その底板を返せば、優雅な知的ゲームの幕開けだ。
抽象的にデザインされたチェスピースの下部にはマグネットが付属。ゆえに持ち運びに適し、酔いが回ってちょっと中断……なんてときにも便利だ。
いずれにせよ、メゾンの比類なき伝統と遊び心の両立が、静かにゆっくりと嗜む伝統遊戯たるチェスと見事にリンク。とっておきの酒とともに、至極の時間を心ゆくまで味わいたい。
鈴木泰之=写真 平 健一、星 光彦=スタイリング 増山直樹、甘利美緒=文