「祖父の服を、父の服を覚えている」
MARGARET HOWELL マーガレット・ハウエル
一貫してシンプルかつ実用的な服を発信し続けてきたマーガレット・ハウエル。50周年を迎える今季コレクションでは、メンズ、ウィメンズの各レーベルを多様に組み合わせ、よりタイムレスでジェンダーレスなショーを披露した。まるでブランドの原点へと立ち返るように。
「元来、メンズとウィメンズのデザインを分けて考えていません。基本的にイギリスのテーラード、ワーク、ミリタリースタイルをモダナイズすることが“デザインの面白み”。ただ、メンズには柔らかさを加えてマスキュリンになりすぎないようにし、逆にウィメンズにはテーラリングの要素を加えてバランスを取っています」。
マーガレット・ハウエルさんがこう語るデザインの要諦は、老舗毛織物メーカー、フォックスブラザーズの生地を使った写真のセットアップにも表れている。「英国フランネルの代名詞」と呼ばれる伝統素材を用いながら、ソフトな仕立てで、現代的なシルエットを作り上げている。
「初めてこのメーカーを知ったのは1970年代の終わり頃。ロンドンで開催されていた毛織物の展示会を訪ねたときです。ブースに老紳士がひとりで座っていました。それが当主のデヴィッド・フォックス氏。そのとき彼が着ていたスーツと生地見本を見て、この会社こそ私の探し求めているものだと直感したのです」。
200年以上にわたり受け継がれたノウハウに忠実に、ベストクオリティなものづくりを続ける。その揺るぎない信念に敬服しているという。そしていつしかマーガレット・ハウエルも同じようにタイムレスな服をつくり続けて50年を経たというわけだ。
「チャリティバザーで見つけたピンストライプのメンズシャツが私の服づくりの原点。素材は柔らかくステッチは繊細。こんなシャツをつくりたいと思ったんです。
そういえば私が初めてつくったジャケットは、理髪店を営んでいた祖父の上着にそっくり。また、父が着ていた園芸用コートや袖をロールアップして着ていたシャツを今でもよく覚えています」。
職人やアーティスト、彼女の父や祖父のようにリアルに働く男性がインスピレーションの源のようだ。
| デザイナー マーガレット・ハウエル さん イギリス生まれ。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジでファインアートを学び、卒業後は自宅でアクセサリーを製作。1970年に初のメンズシャツの製作を機にブランドがスタート。現在イギリス内に7店舗、日本では90店舗を展開。 |
鈴木泰之=写真 菊池陽之介=スタイリング 加瀬友重、いくら直幸、秦 大輔=文