民間企業も宇宙へロケットを飛ばすこの時代、ついにアートも地上を飛び立った。
世界的アーティストのKAWS(カウズ)が、香港を拠点にするクリエイティブスタジオ「オールライツリザーブド」とともに手掛けるコラボプロジェクト
「KAWS:HOLIDAY」の第5弾が発表された。2018年に韓国から始まったこの旅は、台湾、香港、日本を経て、いよいよその舞台を宇宙へと進めた。
第5弾は宇宙をキャンバスにした映像作品!
今作のフォーマットは、なんと「ムービー」。後段では実際の映像をご覧いただきたいが、まずは作品の概要を見てみよう。
今回完成したのは、特殊な探測気球を上空13万6296フィート(41.5km)の成層圏まで打ち上げ、無重力空間を浮遊しながら宇宙や地球の様子を視聴できる映像作品。映像は約2分とコンパクトだが、実際には約2時間かけて宇宙を彷徨い、打ち上げから帰還までは計8時間が費やされたという。
タイトルは「KAWS:HOLIDAY SPACE」。
KAWS作品の代表的キャラクターであり、今年で生誕20周年を迎える「コンパニオン(COMPANION)」がシルバーの宇宙服に身を包み、定点でカメラに映り込みながら道先案内人を務めてくれる。太陽光を浴びて黄金色の輝きを放つ「コンパニオン」の美しさは圧巻だ。
「家から安心して楽しめる」作品
制作の背景には、コロナ禍で不安を抱える人々へ向けたKAWSの特別な思いがあった。
「今年はさまざまなプロジェクトのキャンセルが相次ぐなか、家から安心して楽しめるものを制作したいと考えていました。なので、さまざまな制限があるなかで、何か特別なものを制作しなければならないと感じていました。ここ数カ月は閉じこめられるような気持ちでしたが、このようなプロジェクトが、そういった現実から逃避する機会を与えてくれました」(KAWS)。
そうして現代を代表するストリートアーティストは、宇宙という途方もなく広い空間をキャンバスに見立て、我々に自宅からも楽しめるアートをプレゼントしてくれた。
かつてない新たなアプローチに挑戦する情熱、溢れる好奇心や探究心……そんな彼のエネルギーが詰まった現代アートの最先端は、きっと観る者の琴線に触れ、明日を生きる活力となるはずだ。
それでは、じっくりと「KAWS:HOLIDAY SPACE」をご堪能あれ。よい宇宙の旅を。
原嶋鉄人=文