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飲み過ぎ注意! スポーツドリンクは万能ではない

暑い時期に運動する際は、単に「水分さえ摂取すれば大丈夫」と考えるだけでなく、状況に合わせて運動強度も調整すべきでしょう。
そのときに飲むドリンクも、清涼飲料水やジュースのような糖質を多量に含む飲料だと、真水よりも吸収が悪いことがわかっています。吸収が悪くなるということは、血液の流れが悪くなり、体温を上げてしまう原因にもなります。
これについてはさまざまな研究がなされており、例えばマラソンなど2時間を越えるような持久系のスポーツにおいては、スポーツドリンク程度の糖質を含むドリンクに効果があることがわかっています。一方、1時間程度もしくはそれよりも少ない時間で終わる種目では、糖質を含むドリンクを飲んでも、吸収時間が遅く、あまり良い効果が得られないとも言われています。
ここで、「スポーツドリンクにも糖質が含まれているではないか」と思われるでしょう。スポーツドリンクは電解質を含んでいる、つまり簡単に言うと体液に近い性質も持っている分、体内に吸収されやすいのでスポーツでの摂取に適しているのです。問題はあくまで、飲み過ぎてしまうことにあります。スポーツドリンクは決して万能ではありません。大量の汗をかいたり、ハードなトレーニングをしたときならまだしも、子供がレクリエーションとして軽く運動するようなケースなら、多量のスポーツドリンクや清涼飲料水のような甘い飲料は、かえって疲労を招くこともあるのです。
試合やトレーニング前に糖質を摂取することは、エネルギーの蓄積という点では重要なことです。しかし、あまりに多量の糖質を摂取してしまうと、血液中の糖質濃度(血糖値)が過剰に上昇してしまいます。あまりにたくさんの糖が血液中に存在すると、インスリンという物質が膵臓から分泌され、血糖値を下げようとします。同じタイミングで運動を行い始めると、運動によっても糖が使われるので、血糖値が一気に下降し、通常の血糖値まで下回ってしまうことで低血糖症状を引き起こすことも考えられます。
低血糖症状は、スポーツのパフォーマンスだけでなく思考力にも影響を及ぼします。スポーツドリンクの中には、飲み心地を良くするため過剰に糖を含ませたむものもあります。ですから「スポーツドリンクならいくら飲んでも大丈夫」という考えは非常に危険で、運動前や運動中に、あまりにも多量のスポーツドリンクの飲ませることには注意が必要です。

最後に、高温多湿の中で運動する場合の水分摂取で、ドリンクの温度について気にされたことがある人は多いと思います。
最新の研究では、ずばり4℃くらいのドリンクが体への吸収も早く、体温上昇も防ぐことが明らかになっています。「暑いときに冷たいドリンクを飲むと胃腸などに負担がかかる」「逆に体を冷やし過ぎて体調が悪くなるので常温が望ましい」など諸説あるようですが、暑いときのドリンクは冷たいほうが良いんです。ただし、冷たくておいしいからといって、飲み過ぎないように注意してくださいね。
「子供のスポーツ新常識」
子供の体力低下が嘆かれる一方で、若き天才アスリートも多く誕生している昨今。子供とスポーツの関係性は気になるトピックだ。そこで、ジュニア世代の指導者を育成する活動を行っている、桐蔭横浜大学教授の桜井智野風先生に、子供の才能や夢を賢くサポートしていくための “新常識”を紹介してもらう。上に戻る
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桜井智野風=文
桐蔭横浜大学 教授。同大大学院スポーツ科学研究科長。運動生理学 博士。骨格筋をターゲットとしたスポーツ科学・生理学的な研究を専門とする。公益財団法人 日本陸上競技連盟 指導者育成委員会コミッティーディレクター。スポーツの強化策としては、「ジュニア世代と接する理解ある指導者や親を育てることが一番重要である」という考えのもと、ジュニア対象の指導者育成のために全国を飛び回っている。


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