デザイナーのニックネームをそのままブランド名に冠した「タンタン」。2011年のスタートから今まで、ほぼTシャツだけでやってきた。
その人気を支える、グラフィックの妙に迫る。
うまく伝える「タンタン」のTシャツ
「大事にしているのは、ワード選びとデザイン性です」。そう話してくれたのは“タンタン”ことデザイナーの丹野真人さんだ。
「まずは僕が好きな言葉であること。そして、見た目に収まり良くレイアウトでき、さらに誰でも理解できるような簡単な言葉であること。僕は、特段英語が得意ではないので(笑)」。
選ばれるワードは、丹野さんがこよなく愛するミュージシャンの曲名や歌詞の一節ということも。それもあって音楽好きをも魅了しているが、それは真の狙いではない。
「見る人が見たらわかりますけど、誰のどの曲だとかは僕からは発信しないようにしています」。
実際、音楽好きならば、ピンとくるフレーズもあるかもしれないが、言われないと気付かないものもある。丹野さんの切り取る言葉は、何にも当てはまる普遍的なものが多いのだ。
「僕が純粋にピックアップした言葉に、着る人のパーソナルな体験を重ねて一緒に楽しんでほしいんです。だから、元ネタが何かわからないままでいいと思っています。たまに、ヒントは仕込んでますが」。
丹野さんがTシャツに魅了されたのは、好きなミュージシャンたちがよく着ていたから。格好良かったのはもちろんだが、彼らがどんな思いで着ているかを想像するのも楽しかったし、答えを知る感動もあった。
「僕はTシャツに記すことでワードを発信し、着る人がそれを受信する。Tシャツは強いメディアになると実感じたんです。作り手と受け手が垣根なく一体になれるんだと」。
言葉とデザインの力で、人と人をつなぐ。丹野さんの巧妙な仕掛けにハマってみるのも面白そうだ。
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