「言っていること」と「やっていること」が違うと
個人的には、それでも「つけないよりつけるほうが良い」と思います。なぜなら、「知る」ことに貢献しているからです。
しかし、人の心はそんなに合理的ではありません。本来、私などより価値あることをしている「SDGsバッジ」をつけている(のに実際にはあまり貢献活動をしていない)人に対して、多くの人はがっかりすることでしょう。
人は何にも言わず、何にもしないより、「言っていること」と「やっていること」が違うほうを低く評価するものです。ゲインロス効果といって、プラスのこととマイナスのことの差が大きいときに、印象が強くなるからです。
若者の社会貢献志向は本気
我々おじさん世代は、これまで不幸なことにかけ声だけの社会貢献運動をたくさん経験してきました。
メセナにCSR、各種NPOや財団法人などなど。景気のいいときに税金対策で始めた社会貢献活動は、景気が悪くなると取りやめになって、結局本気でもなんでもなかったことがわかるというのを繰り返してきたように思います(もちろんちゃんとしたものもたくさんありますが)。
それで学習性無気力に陥ったおじさん世代は、SDGsもなめているかもしれません。いつものやつがやってきた、と。しかし、若者世代は違います。グレタさんのようにマジで怒っています。そこに形式だけのバッジは、火に油を注ぐようなものです。
バッジをするならちゃんとしましょう
話は単純で、せっかくSDGsバッジをするのであれば、行動面でもちゃんとしましょうというだけのことです。うちの会社はこういう貢献しているから大丈夫、ではありません。バッジをつけている本人が個人として何をしているか、です。
SDGsは17もの領域があるので、日常生活にも結構関わってきます。ご飯を残すのは目標2の「飢餓」に反抗しているみたいですし、セクハラ発言(そもそもダメですが)は目標5の「ジェンダー」に、アウトドアで自然を汚したら目標15の「陸上資源」に害を与えているようにみえます。
しかも「ダメなことをしていない」だけで、バッジに値するわけではなく、「良いことをしている」ことが必要です。バッジに見合った行動をして、若者に呆れられないようにしましょう。
連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ「20代から好かれる上司・嫌われる上司」組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった
「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
上に戻る 曽和利光=文 株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長 1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。 |
石井あかね=イラスト