コロナ禍の先を見る 本来ならこの5月に第2回目が開催されていた。
しかしコロナの影響により「人命最優先」と早々に中止を決めた。そして現在、新たなクラウドファンディングを展開している。開催中止で仕事を失った約300名のスタッフを支援し、彼らがいるからこそできるエンターテイメントを、そして自らを含む人々の心を「死なせない」ためだという。
残念ながら中止となった、2020年日比谷音楽祭のロゴ。 ライブに出演するアーティストは、ステージがあって初めて輝く。そのステージは、音響、照明など裏方のスタッフが汗を流して設けられる。亀田さんは、音楽祭が再開できたときに改めてサポートしてもらうために、1年も2年も前からスケジュールをおさえていた彼らの暮らしを、今、支える責任を感じた。
そうして始めたプロジェクトに対し、支援者の関心は高かった。目標金額である400万はスタート1週間ほどで早々にクリア。今はネクストゴールを800万に設定し、6月22日(月)まで継続展開中だ。
日比谷音楽祭事務局が立ち上げた、開催中止で仕事を失ったスタッフをサポートするためのクラウドファンディング 。 支援へのリターンは音楽で行いたいという。そうして関わった人たちがお金を幸せな形で循環させられる具体策を、現在もチームみんなで詰めている。その一方、この時期、音楽家は何を考えているのだろうか。
「9.11や震災のときと違い、音楽の力が及ばない領域があることを、今回とても感じています。震災のときは一緒に立ち上がって、例えば現地でボランティアをしたり、弾き語りや炊き出しをしたりしました。音楽で元気になろう、繋がろうというメッセージを少なからず送れたと思うんです。
けれどコロナに関しては、3密もそうですけれど、音楽の魅力をわかりやすい形で伝えられるコンサートやライブが認証されない。今、アーティストたちはアクションを起こしたくても起こせない。良かれと思ってする行動が人の心のなかに入っていかないもどかしさや空振り感を強く抱いているし、これは本当にしんどいですね。
ただ希望はあって、一例は、そのような状況でもSNSなどを使って音楽を発信していくアーティストがいること。さらにみなさん同様、自宅作業でレコーディングを行い、録音した音データをオンラインで交換しながら音作りができていることです。
少し前まで、「ミュージシャンはスタジオで音を合わせてナンボでしょ」と思っていた亀田さんだが、「今はひとりでコンピューターに向かって音楽を録音し、リモートで自宅にいるほかのミュージシャンとデータ交換して一曲を完成まで導いています」と笑いながらいい、しかもこの変化をとてもポジティブに捉えているという。
「治療薬やワクチンが開発されて、コロナ禍があけた先にはすごく明るい未来が待っている気がするんです。ルネサンスはペスト大流行の終わりに起きているんですね。このコロナ禍の間にも、芸術が大きな変革を起こす土壌がしっかりと醸成されていて、ポジティブな形で弾けるときがくるのではないか。そのときは本当に音楽、エンターテインメントの出番だと、そう期待しているんです」。
※写真提供:日比谷音楽祭実行委員会 だからその日までは、「心が死なないこと」「心が死なない状況を作ること」を大切にしたいという。
そして第2回目の日比谷音楽祭が中止となったことをポジティブに転化し、本来出演するはずだったアーティストとの繋がりを保ち、コンテンツをさらに熟成させ、次回の幕開けに向かい、また走り続けていく。
亀田誠治(かめだせいじ)●1964年生まれ 音楽プロデューサー・ベーシスト。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツ、GLAY、いきものがかり、JUJU、エレファントカシマシ、大原櫻子、山本彩、石川さゆりなど数多くのアーティストのプロデュース、アレンジを手掛ける。2004年に椎名林檎らと東京事変を結成し、2012年閏日に解散。閏年の2020年元旦に再生を発表。2005年よりap bank fes にbank band のベーシストとして参加。2007年第49回、2015年第57回日本レコード大賞、編曲賞を受賞。NHK Eテレにてシリーズ放送された音楽教養番組『亀田音楽専門学校』などを通じて次世代へ音楽を伝えている。
2019年にフリーイベント「日比谷音楽祭」の実行委員長を務め、10万人を動員。
「37.5歳の人生スナップ」もうすぐ人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。鬱屈した思いを抱えているなら、彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。
上に戻る 小山内隆=取材・文