「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……環境保護を助けるウォッシング・バッグ
最近はファッション業界も皆「サステイナブル」なモノ作りに取り組んでいます。僕も洋服を作っているのでもちろん意識はしていますが、特にそこをアピールするつもりはありません。
実際、真剣に取り組めば取り組むほど、ファッションからは遠ざかっていくような気がしているから。
とはいえ環境問題から目をそらすべきではない。個人的には、当たり前ですがゴミを分別し、ペットボトルをできるだけ買わない、外出時のゴミは持ち帰るといったことには気をつけていますし、次にクルマを買い替えるときは電気自動車にするつもりです。いたって普通ですが、現代の社会人なら当然のことなのかも。
洋服を作るうえで気をつけているのは、一度買ったら相棒のようにずっと付き合える、捨てられない服を作り続けること。ポリエステルやナイロン素材を使用することに否定的な意見もありますが、雪や雨風を遮るには必要な素材。男が着る服はタフでなければいけないんです。
ノンネイティブの製品にはポリエステルやナイロン素材を使ったものが多く、たとえばゴアテックスを使用した商品はリサイクル素材のみを使用。サステイナブルだからオーガニックコットン、という発想だけではこの世の中は乗り切れません。
そんなジレンマを解消してくれたのが、グッピーフレンド・ウォッシング・バッグ。
グッピーフレンド・ウォッシング・バッグ洗濯するたびに抜け落ちて、海や川へ流出するマイクロファイバー(合成繊維)の量を削減する洗濯用バッグ。その内側はなめらかなポリアミド製なので磨耗が減り、結果衣類自体の保護にも役立つというスグレモノだ。
化繊の衣類を洗濯すると、マイクロファイバーが抜け落ちて海や川に流出してしまうのですが、このバッグはそれを削減してくれます。使用後はバッグからマイクロファイバーを取り除き、適切に処分すればOK。これを鎌倉のパタゴニアで見つけたときは、感動しました。僕は一度着たらすぐに洗濯するタイプなので、これがあれば安心。
「サステイナブル」については難しく考えるより、それぞれができることからやるべきなのではないでしょうか? 誰もが持っているはずのポリエステルやナイロンの服を、とりあえずこのバッグに入れて洗濯する。それだけで環境保護にひと役買える。せっかくファッションが好きなら、こういうことから始めてみるのもアリだと思います。
いいモノって世の中のためになるんです。
[藤井隆行 プロフィール]
東京を代表するブランド「ノンネイティブ」のデザイナーで、ファッションからライフスタイルまで一貫したこだわりを持つ。最近は在宅仕事も増え、趣味を増やそうと料理にチャレンジ。カタチから入る性分ゆえ、ひとまず京都の老舗「有次」の包丁を購入。
「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……
世の中のありとあらゆるプロダクツから、「ノンネイティブ」藤井隆行さんが独自のセンスと審美眼でモノをセレクト。デザインとは? 実用性とは? 買い物の醍醐味とは? ブランド名や巷の情報に惑わされず、本当に自分に必要なモノと出会う方法を指南。
上に戻る 竹内一将(STUH)=写真 町田あゆみ=文