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要は「言語化能力」の不足

ただ、「非言語コミュニケーション」が通用しないのであれば、「言語」でコミュニケーションをすればいいだけのことです。要は、会議などのコミュニケーションがオンライン化してストレスを感じるのは、「言語化能力」が不足している、あるいは慣れていないのです。
言うまでもなく、若い人たちはチャットツールやSNSを使いこなす「ソーシャルネイティブ」ですから、テキスト文化で育っています。
絵文字、顔文字、スタンプなども含めて、自由に感情表現やコミュニケーションを行っています。それが仕事においても広がっただけです。今度は上司世代の我々がキャッチアップしなければなりません。
 

「察してくれ」ではなく「全部言う」

つまり、これまでは「皆まで言うな」「良きに計らえ」「察してくれ」といっていたところを、「全部言う」しかないのです。「察してくれ」だと、曖昧な指示で済みますし、責任も取らなくていい。ある意味、とても「楽」だったわけです。
上司世代は部下だった頃、当時の上司の思いを「察する」ことで出世したので、今のメンバーにもそれを求めようとしてしまいますが、残念ながら時代は変わりました。「言っていないこと」は「無いもの」です。リアル場ならまだ察する人もいようものの、オンラインコミュニケーションでは完全に「無いもの」になってしまいました。「言葉にできない」と言っていてはいけないのです。
 

オンラインのほうが「創造性」が高い

しかも、意外な事実かもしれませんが、さまざまな研究によってテキストチャットなどでの議論のほうが、リアルな議論よりも創造性が高いということが判明しています。「深い議論」ができるのです。立場や空気などを考慮できなくなるので、議論に参加するメンバーが平等になり、発想が解放されることでアイデアがどんどん出てくるというわけです。
「空気を読まない」発想は、不快感や違和感をもたらすかもしれませんが、創造性とはそういうことです。上司の顔色を読んでいては、新しいものなど生み出されません。オンライン会議にはそういうメリットもあるのに、上司が自分のリテラシー不足から旧来的な方法に戻せと言っていては疎まれてしまうのも当然です。オンライン会議の不便を嘆くのではなく、良い面に目を向けて、我々は適応していかなければならないのです。
 
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「20代から好かれる上司・嫌われる上司」
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
石井あかね=イラスト  


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