「太陽と月でいったら今田さんが太陽で、僕は月やし。引くことによって、違って見えるところもありました。僕がフィーチャーされているときは、今田さんは今田さんで器用ですから月の立場もできる。コンビのようでコンビじゃない不思議なバランスがあります。なんとなく面白がるところも似ているから、一時期、一緒に仕事をするのちょっとやめようと思って。結局、同じタイプのピン芸人は2人いらんから(苦笑)。
なんとなく別々の経験をするほうが、お笑い芸人、テレビタレントとして養われるものがある。芸人として前半、中盤、後半があるとしたら、前半はずっと一緒におったけど、中盤からはいったん離れてピンでそれぞれテレビに出るほうが成長できるだろうと。若いときは一緒やったけど、今だとまったく考え方が異なるときもたくさん出ていると思うんですよ」。
そう考えるようになったきっかけ、あるいは「何か迷った時期があったのか?」と尋ねると、「迷った時期は別にない」という。
ただ、「30代半ばくらいのときに、レギュラーが6本くらい終わって。家族もおるから仕事は頑張らなあかんなと思ったんです。その道中でそんなふうに考え出したんちゃいますかね。向上心があるタイプではないから、無理やりでも責任を感じられる状況におったからよかった」と続ける。
「高視聴率番組」に抱いた違和感
加えて、「俺、もう世の中とまったく合わないんだな」と感じたことも、一歩引いたスタンスにつながっているのではないかと振り返る。いっとき、細かい視聴率をくまなく見続けることが日課だったという東野。世間で人気を博す高視聴率番組と、自身が面白いと感じる番組の距離感に違和感を覚えた。
「おもろないなと思ったら、視聴率がめちゃめちゃいいんですよ。でも、裏を返せば、俺の意見は世の中と合わないから、(言葉に)責任を持てるなと思ったんですよ」。
たびたび、“心がない”などとも揶揄されるが、悟りの境地、達観しているからこその冷静さなのかもしれない。世の中の大多数と意見が合わないからこそ、自分の意見を誰かに忖度する必要もない。
「YouTubeで『幻ラジオ』をやっているのは、自分がしたいし、自分で責任が持てる範囲でやるから。一方、たくさんのお金がかかっていて、いろいろな人が関わっているゴールデン番組に出演する場合、世間と合わない俺の意見なんて必要ないんじゃないのかなとも思うんです(笑)。それやったら、船頭を決めてくれて、その人の意見に従うほうがいいんじゃないかと思うんです」。
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