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30代を目前に立ち上げた「リトルトーキョー」

リトルトーキョー
そこでナカムラさんが開設したのが、求人サイト「日本仕事百貨」だった。日本仕事百貨は従来の求人サイトとは、まったくスタイルが違う。その特徴は、まるで旅行雑誌をめくっているかのように職場の空気感や特徴が鮮やかに描写されている点にある。
「旅行雑誌を見ていると、実際に行かなくてもワクワクできる。そんな感じで、日本仕事百貨をのぞいてさまざまな仕事に興味を持ってもらえたらうれしいんです。仕事って給与や福利厚生だけじゃ見えてこないものがあるじゃないですか。もちろん条件も大事な要素のひとつではあるけど、実際にどんな人と働くのかを知りたいっていうのは当時、僕自身が一番思っていたことでした」。
働く人々の息遣いが聞こえてきそうな綿密な描写は、まるで物語を読んでいるようで心地良い。もし自分がその仕事についたら……と自然と妄想してしまうのだ。転職予定のない人や、今の仕事に満足している人でも閲覧しているというのもうなずける。そんな「読ませる」求人サイト運営のために、やはりナカムラさんが大事にしていたのは、直接目で見て話を聞くことだった。
「日本仕事百貨は、実際に僕らがその場所へ取材に行き、感じたことを素直に文字にするように心がけています。と同時に、やっぱり直接行った人にしか味わえない特権みたいなものがあって、文字で魅力のすべてを伝えることは難しいと感じることも多いんです。インターネットって、時にとんでもないところまで広がるし、誤解されないように慎重に表現しようすると、削がれてしまうものって絶対ある」。
そこで、もっと受け手がその場の空気を感じ取れて、実際にコミュニケーションを図れる場所が作れないかと考えて生まれたのが、現在のナカムラさんの拠点でもある「リトルトーキョー」というスポットだ。資金はクラウドファンディングで募り、リノベーションした元寿司店を使って虎ノ門に居を構えた。
「リトルトーキョーをひと言で言えば、人の存在が感じられる場所。僕が独立したきっかけは、変わった生き方をしている大人にたくさん出会えたからでした。文脈を切り取って伝えるのではなく、実際に肌で感じられる場所を作ることで、自分と同じような“きっかけ”を与えられたら、と思ったんです」。
リトルトーキョーとは、いったいどんな場所なのか。そして、ナカムラさんが数々の挑戦によって感じた究極の働き方については後編で。
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「37.5歳の人生スナップ」
もうすぐ人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。鬱屈した思いを抱えているなら、彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。 上に戻る
藤野ゆり=文 河野優太=写真

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