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【2010年代】
①『東野・岡村の旅猿 ~プライベートでごめんなさい~』

『東野・岡村の旅猿14 プライベートでごめんなさい… 静岡・伊豆でオートキャンプの旅 プレミアム完全版』2857円、発売元:VAP/よしもとミュージック ©「東野・岡村の旅猿14」製作委員会
東野幸治と岡村隆史が世界各国や日本各地を回るバラエティ旅番組。毎回、東野が自由に旅先や旅程のプランを立て、岡村はその無茶な旅に巻き込まれるという内容で、Amazonの「DVD お笑い・バラエティ」の売れ筋ランキングでもトップ5入り常連の人気番組だ。
この番組はロケハンやリサーチなど、通常行うべき事前準備をほとんどせず、同行スタッフもハンディカメラを持ったディレクターなど、ごく少数。あまりの行き当たりばったり感に毎度ヒヤヒヤさせられるが、だからこそ私生活でも仲がいいという東野と岡村のプライベート感がリアルに滲み出てきて面白い。
なかでも話題となったのが、中国の旅での一幕だ。ガイドブックで紹介された西湖に向かった一行が、絶景を拝むべく現地の船をチャーターしようとするのだが、通訳もおらず、もちろん現地語も話せない東野が、果敢にも「あ」の一文字の言い回しや表情、身ぶりのみで交渉に挑み、しまいには絶妙な表現力で船代まで値切ってチャーターしてしまう。
「東野語」と呼ばれるこの語り口は海外でもバズったとのウワサも。
 

②『ドキュメンタル』

『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル シーズン5』3800円、発売元:よしもとミュージック Ⓒ2020 YD Creation
2010年代、時代の流れに合わせ、お笑い番組もついにテレビの枠を超えた。Amazonプライム・ビデオの独自番組『ドキュメンタル』は、松本人志考案の「密室笑わせ合いサバイバル」。テレビよりも自由度が高い分、“ギリギリアウト”な下ネタも容赦なく飛び出してくるのが特徴だ。
毎回10人の参加者が自腹で現金100万円を持ち寄り、密室という閉ざされた空間のなかでルール無用の芸を披露。6時間という制限時間のなかでより多く参加者を笑わせ、そして最後まで笑わなかった人間が優勝者として計1000万円を総取りできるという、至ってシンプルなルールだ。
『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の人気企画「笑ってはいけない」シリーズと似たテイストだが、『ドキュメンタルは』は“お仕置き”では済まされない。笑ったら減点、もしくは即退場。そのまま失格で参加費も没収となる、超真剣勝負である。
長期戦のため、場の空気も刻一刻と変化する。笑いのポイントも時間帯によって変わり、普段は面白いはずのボケがすべったり、逆にすべった空気こそが面白かったり、笑いを仕掛けた側が自爆してしまうパターンも多々。制限時間に追い詰められていく芸人たちが極限状態で生み出す笑いの破壊力は、ほかの番組では見られないエネルギーに満ちている。
『ドキュメンタル』は、過剰なコンプライアンス問題で閉塞感に苦しむテレビへのアンチテーゼでもある。番組冒頭に流れる以下のテロップは、お笑いの炎を絶やすまいとする松本人志の覚悟さえ感じられる。
「当番組は、お笑い芸人による“戦い”の記録です。番組の性質上、収録中の模様をできる限り、ありのままお見せしているため、刺激的な場面もあります。視聴の際にはご注意ください」。

今年から2020年代の幕が開けたが、今度はどんな時代になるだろう? お笑い芸人たちはさらに活躍の場を広げ、YouTubeの世界にも続々と進出。テレビでは連日「お笑い第7世代」と呼ばれる若手芸人たちが次々台頭――次の10年もまた、明るそうだ。
たくさん笑うことは、免疫力の向上につながるという。さっそくここで紹介した作品たちで、ウイルスに負けないよう心と体のメンテナンスをしよう。天国のバカ殿様もそれを望んでいるはずだ。
「インドアライフ充実術」
何かと外出が厳しい時季だけど、見方を変えればピンチもチャンス。屋内でアクティブな休日を楽しむ、インドアライフのジュージツジュツをデンジュ。
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原嶋鉄人=文


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