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おそらくそこには「黒幕」などいない

人は複雑な問題が生じたとき、「あいつのせいだ」とわかりやすい「黒幕」を仕立て上げたがります。そう考えれば、怒りをぶつける対象ができ、ストレスを軽減することができるからです。
シンプルな問題なら、本当の原因である「黒幕」を倒せば一件落着となることもあります。しかし、女性活躍のように、数十年間多くの人がさまざまな方法で挑戦しているのに解決しない問題では「黒幕」はスケープゴートにすぎないことがほとんどです。
女性活躍の原因は、男性でも女性でもなく、システム全体の問題でしょう。私の周囲を見ても、女性の社会進出を阻もうとしている人などいるようにはみえません。仕組み、構造の問題なのです。
 

自分から容疑者に名乗りでることなかれ

それをわかりやすい「黒幕」のせいにするのは思考停止です。しかし、そうしてしまうぐらい、女性活躍の問題が難問であったことも事実です(まだ解決できていませんし、私にも正解がわかっているわけではありません)。
そんな状況の中、おじさん上司が軽々しく「うちの会社も、もっと女性が働きやすい職場にしなくちゃなあ、ははは」などと言おうものならどのような反応があるかは想像がつきます。
「あなたのようなおじさんたちが、結局何も効果的なことをしなかったから今の状況があるんじゃないですか」と、せっかく本質的に考えしていたかもしれない人たちを、ふたたび「黒幕説」に引き戻してしまうことでしょう。格好の「黒幕」役が現れたのですから。
 

「実現しない理想」よりも「具体的な行動」を

女性活躍は30年以上解決できていない難問であるということを心底認識することから始めなくてはなりません。
そもそも「女性も働きやすい職場が大事」であるなんてことはきわめて当たり前のことで、「世界が平和であったらいいのになあ」と言っているようなものです。しかも30年も待たせているわけですから、何もしていない(ように見える)上司が実現しもしない浮ついた理想を具体論もなしに語れば、「本気ではない」と疑われるのは当然です。
それならば小さなことでもいいので、自分がマネジメントしている職場でできることをして、「この人は本当に女性が活躍できる場を作ろうとしている」と感じてもらうのが先ではないでしょうか。
 
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
 
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「20代から好かれる上司・嫌われる上司」
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。上に戻る
石井あかね=イラスト


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