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返せない場合の「救済措置」も知っておこう

賢い借金
--ちなみに、先ほど触れた「教育ローン」は親が返済するものですよね。一方、奨学金は子供が社会に出てから返済する仕組み。卒業後の返済に苦労しないためのアドバイスは前回聞きましたが、とはいえ、やはり子供の負担になるのが心配です。
もちろんそのリスクはきちんと考えるべきで、いくつか知っておくべきポイントがあります。まず、奨学金の返済は子供が行うシステムですが、もちろん両親が返済資金を肩代わりしても構いません。
また、もしも返済が苦しい場合には救済制度があるので、それを活用してください。
--どんな救済制度ですか?
奨学金の返済を待ってもらう「返還期限猶予」と、返済月額を減らしてその分期間を長くする「減額返還」があります。気をつけてほしいのは、これらの制度はすべて子供の自己申請になること。返済が滞ると日本学生支援機構から督促通知が届きますが、それを放っていると、ブラックリストに入り、延滞金や法的措置につながります。厳しくなったら、必ずお子さんが申請しましょう。
--法的措置はつらいですからね……。
最後に注意してほしいのは保証人です。奨学金は、連帯保証人と保証人を用意するか保証機関にお願いするか、どちらかの手続きが必要です。連帯保証人は原則父母のどちらか、保証人は親以外の親族です。
実は奨学金の場合、この制度のために「三者破産」になることがあるのです。最近、新聞でも報道されています。
--また新しいワードが出てきましたね……。三者破産とはなんですか?
親と子、さらに親戚を巻き込んだ三者が自己破産するという意味です。これもほかのローンでは少ないでしょう。奨学金の保証人は、通常の借金と違う感覚で引き受けてしまう人が多い。「子供の進学のためなら」と、無理をすることがある。しかし、子供が返せず、親も返せず、保証人も返せなくなるという最悪のケースがあることも知っておくべきです。
--ちょっと怖いですね。
ある統計だと、三者破産をした比率はおよそ自己破産した奨学生の100人に1人ほど。返還者に占める奨学生の自己破産率が0.05%なので、比率でいえば少ないですが、実際にその状況になると大変です。だからこそ、前回話したようにライフプランと合わせて奨学金を考えてほしいんですね。
--保証機関にお願いする場合はどうでしょうか?
こちらのほうが親や親戚は安心です。ただ、機関保証は保証料がかかります。例えば月10万円を借りる場合、毎月約5400円の保証料がかかる。大学4年で合計すると25万円を超えるんですね。ですので、ここは家計の状況を見ながら慎重に選びましょう。
最近のデータでは、51%が人的保証を選んでいるようですから、ほとんど半々の割合です。
--どちらがいいのではなく、合う方を選択すべきですね。奨学金は、いろいろと勉強することが多くてびっくりしました。
ですよね。保護者向けの講演会に行くと同じ声が多く聞かれます。前回、今回と話した点を必ずチェックして、しっかり親子で話し合って決めてほしいですね。
--わかりました。今回のお話を肝に銘じたいと思います。ありがとうございました!
 
有井太郎=取材・文 小島マサヒロ=撮影


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