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2020.02.08

ライフ

奇才・バカリズムが仕掛ける『架空OL日記』は、シュールなお笑いの真骨頂だ

知らなきゃ男が廃るが、知ってりゃ上がる。気にするべきは、顔のシワより脳のシワ。知的好奇心をあらゆる方向から刺激する、カルチャークロスインタビュー。

日々ストレスを感じてますが、褒められると報われます

1975年、福岡県生まれ。’95年にお笑いコンビ、バカリズムを結成。原作・脚本・主演を務めたテレビドラマ『架空OL日記』では向田邦子賞を受賞。
1975年、福岡県生まれ。’95年にお笑いコンビ、バカリズムを結成。その後、2005年からはピン芸人として活動する一方、脚本家、俳優など多方面で活躍する。原作・脚本・主演を務めたテレビドラマ『架空OL日記』では向田邦子賞を受賞。
そのブログはOLが日常を綴ったものだと思っていたら、実は男が書いた妄想だった。驚愕の事実で世間を騒がせたのは尖った笑いのセンスで注目を集めるお笑い芸人、バカリズム。くだんのブログはのちに『架空OL日記』として書籍化とテレビドラマ化されたが、このたび映画化されることにもなった。そして、そこまで人々を惹きつけるブログを書こうと思ったのは「ただの遊び」だったとバカリズムは振り返る。
「書き始めた頃、芸能人のブログがブームだったんです。みんななんてことのない日常を綴ってるだけ。だったら僕は自分とはまったく異なる人物になりすまして、その人の日常を書いたほうが面白いんじゃないか。そう思ったのがきっかけで、最初はただの遊びだったんですよね」。
平凡な日々の記録だが、すべて妄想だと知ったうえで読むとシュールな笑いが生まれる。そんな奇妙なブログを映像化するにあたりバカリズムは女装。夏帆や臼田あさ美に交じって当然のようにOLを演じている。
「作品のなかで、男の僕が普通にOLとして生活している。その状態の異常さを面白がってもらえれば、と思います。最近では“OLあるある”みたいな物語に思われがちなんですけど、これは僕がOLをやっているという壮大なボケを楽しんでもらう作品なんですよ」。
シュールな笑いはバカリズムの得意とするところ、と思われがちだが、引き出しの多さも彼の強みだ。
「僕の笑いには結構いろんなパターンがあって、『架空OL日記』はそのひとつにすぎません。というのも笑いを作り続けるためには気に入ったパターンだけをやっていてはダメ。新しい笑いを生むために、いろいろと面白がることを大切にしています」。
その言葉どおり、バカリズムは執筆、映画、音楽など多方面で活躍している。なかでも音楽には嫉妬のようなものを感じているとか。
「音楽って聴けば聴くほど良くなってきたりするじゃないですか。でも、笑いって最初に披露するときがピークなんです。そこでどれだけ大きな笑いを生んでも、それ以降はどんどん飽きられていく。とても鮮度が大切で、だから芸人は新作を作り続けないといけないんです」。
自問しながら笑いを創作する日々。過酷な日常を過ごすバカリズムにとって仕事の原動力とは何だろう。
「褒められることですね。お笑い以外に趣味がないからガス抜きする機会はないし、ストレスを感じても耐え続けるだけ。大変だけど褒められると報われるんです(笑)」。
昨年末には結婚を発表して話題を呼んだバカリズム。今は愛する人の褒め言葉が、いちばんの原動力なのかもしれない。
『架空OL日記』
『架空OL日記』出演:バカリズム、
©2020『架空OL日記』製作委員会
監督:住田 崇/出演:バカリズム、夏帆、臼田あさ美、佐藤 玲、山田真歩ほか/配給:ポニーキャニオン、読売テレビ/2月28日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショー www.kaku-ol.jp
2017年に放映されたテレビドラマをオリジナルキャストで映画化。バカリズム演じる「私」を中心として、銀行に勤めるOLたちの日常が淡々と描かれる。リアルなのにシュールな世界観を堪能できる意欲作。
MASAYUKI ICHINOSE(W)=写真 村尾康朗=取材・文


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