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2020.01.27

ファッション

ディオールの1400万円の“つなぎ”が示す、ファッションの明るい未来

ディオールのサマー2020メンズコレクションから、弩級のアイテムが届いた。
シルク素材の半袖ジャンプスーツ、通称つなぎ。価格は1400万円。いや、どうしたって念を押したくなるが、ウェディングドレスや着物ではなく、ジャンプスーツである! 我々の理解の範囲のはるか上をいく服だが、うろたえてはいられない。いったいどういうことなのか。
素材は最高級シルクのジャンプスーツ/クリスチャン ディオール
素材は最高級のシルク。そこに描かれた優美かつ精緻な柄が見事だ。ちなみに「トワル ドゥ ジュイ」を直訳すると「ジュイの布」。ヴェルサイユ近郊の村、ジュイ=アン=ジョザスの工場で生まれたコットンプリントの布がその名の由来だという。1400万円[参考価格・受注生産]/クリスチャン ディオール 0120-02-1947
白地に呉須のような色調で描かれているのは、植物や動物や精霊たちだ。これは18世紀に生まれた「トワル ドゥ ジュイ」と呼ばれるフランスの伝統柄。決まった柄はなく、草花や動物など田園風景をイメージさせるモチーフが多用されるという。
で、このジャンプスーツの柄は、モンテーニュ通り30番地の、ディオールが初めて構えたブティックの壁にプリントされていた「トワル ドゥ ジュイ」に倣ったという。となるとこのプリントはフランスの伝統的な手法で……と想像するが、違う。実は日本の、京都の職人による手描きなのだ。ここに当代アーティスティック ディレクター、キム・ジョーンズの考えがある。

本コレクションでディオールが掲げるコンセプトの1つは「オートクチュール」。メゾンの歴史に敬意を払いつつ、既成概念にとらわれない手法を用いる。それによって、オートクチュールの神髄である「職人の手仕事」の、時代や場所を超えた普遍性を表現したのだ。
思索の深さに舌を巻くが、斜に構えず、こんなクリエイションを通じてド派手にぶち上げる姿勢が痛快。ファッションの未来は、きっと明るいはずだ。
 
清水健吾=写真 来田拓也=スタイリング 加瀬友重=文


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