「上司は自分を見てくれていない」
部下の立場に立って考えてみます。彼の提案が論理的に一本の筋が通ったものであったとします。しかし、論理の流れを一つひとつ説明するのは冗長なので、「自分の仕事を日々きちんと見てくれている上司なら、この部分は理屈を端折っても理解してくれるだろうから大丈夫でしょ」と、論理の筋道をスキップしたのだとすればどうでしょうか。
そこに上司から「論理的でない」「意味がわからない」とだけ一方的にフィードバックされれば、「この人は全然自分の仕事を見てくれていない」「自分のことをわかっていないのだな」と思うかもしれません。上司と部下の信頼関係の基本は相互理解です。相手がスキップした論理がわからないことで、その人間関係に傷がついてしまうこともあるのです。
「上司は自分を信頼してくれていない」さらに最悪なのは、上司が自分の理解できていない論理の「ミッシング・リンク」の部分を指して、「こんな理屈の通らない(と自分が思っている)ことを言うからには、部下は何かそもそも言いたい主張が先にあって、それにこじつけて論を張っているんだろう」などと、性悪説に陥る場合です。
わからないことはすぐに、自分の妄想を投影してしまい、部下に悪意があると認定する。これではせっかく良かれと思って提案したのに、変に勘繰られ、疑われることになり、この上司は、思い込みが強く、面倒くさいなあ、いちいち人のことを悪く見るんだな、と上司への部下の信頼は地に落ちるでしょう。今後は、その上司には率直な提案をするのを躊躇するかもしれません。ストレートに物を言ってくれなくなるのです。
「論理」がわからなければ、まず自分を疑う
論理は長くなると、それはそれで追うのが難しくなります。そのために人間は公式や定理、常識、理論を生み出して使用しているわけです。そう考えれば、理解しやすいようにしようと公式や定理などを使って話を短くしようとしている発信者側の努力に、分からない側は分からない側なりに努力をして寄り添うべきだと思います。
また、論理が明確に明示されていないからと言って、論理的でないわけではありません。発言者自身もある前提条件から結論を導くのに、その途中の論理は可視化できていなくとも、直感的に「絶対そう」ということだってあるはずです。
上司たるもの、部下がなかなか論理をつなげられないときには、突き放すように「論理的じゃないよね」と言っておけばよいのではなく、自らその「ミッシング・リンク」を見つけてあげるくらいでありたいものです。
曽和利光=文 株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長 1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。 |
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