「強いチームをつくるうえで、監督の役割は?」――。
よく聞かれる質問です。私の理想は、監督が指示を出さなくても部員それぞれがやるべきことを考えて、実行できるチームです。つまり、指示待ち集団ではなく、「考える」集団。言葉にするのは簡単ですが、考える集団をつくるには、豊かに実る土壌づくりと同様に相応の時間と労力が必要です。
人は結果をすぐに求めたがりますが、強いチームをつくるための土壌、つまり環境はすぐに構築できるわけではありません。ただ、その環境を整えれば、誰が監督になっても強いチームであり続けることができると私は考えています。
しかし、スポーツ界では監督が交代することで弱体化する光景をよく見ます。一般の企業はどうでしょうか? 経営者が代わってもそれまでと同じ、あるいはそれ以上に成長していく企業はたくさんあります。スポーツ界でも同じことができるはずだと私は考えて、青学陸上競技部と向き合ってきました。
部員を「相談できる人」に育てる
自分で考え、実行できるチームをつくるために、私が最初に取り組んだのは、部員を「相談できる人」に育てることでした。相談するとはどういうことか。たとえば、選手が「足が痛いです」と私に言ってきたとします。しかし、それは相談ではなく報告です。
だから私は、選手にこう問いかけます。「それで?」。続けて、「いつからどこが痛いの?」「治るまで1週間? 10日? 1カ月?」と質問を広げていきます。さらに、「治るまで1カ月かかるなら、いつまでに治すように努力するの?」「それまでにできるトレーニングはA・B・Cがあるけど、どの方法でやってみたい?」と具体的にしていきます。
そして、「今回はトレーニングAにしたいと考えていますが、監督はどう思いますか?」と自分で答えを出すところまで求めます。そのとき、それが本当の相談であると部員に話すようにしていました。
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