渋谷を語るうえで音楽は欠かせない。特に、オーシャンズ世代が青春まっただ中だった90年代は。 宇田川町のレコードショップ、点在する小箱のライブハウスにクラブ、レーベルを持ったカフェや黄色いメガCDショップ、そして、地名がジャンルになってしまった渋谷系。 その中心にいたミュージシャンのひとりが曽我部恵一さんである。 サニーデイ・サービスのギターボーカルとして1995年にメジャーデビュー、2000年のバンド解散後はソロとして、2004年には自主レーベル「ローズレコーズ(ROSE RECORDS)」を設立し、常に我々の近くから新しい景色を見せてくれてきた。 そんな曽我部さんは、オーシャンズが11月に開催したデニムイベント「OCEANS DENIM CAMP」にサプライズで出演してくれ、サニーデイ時代の名曲「東京」と、ソロになってからの名曲「キラキラ!」を歌ってくれた。 2つの名曲と、その瞬間を繋ぐ3つの点。時間が繋がったことでできた線は、聴く人の数だけさまざまな形を作り、絵を描く。 そんなことを、12月25日にリリースされた曽我部さんのCD『The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-』を聴いて実感する。 12月11日に配信サービススタート、12月25日にCD(2500円)と限定アナログ盤(3900円)がリリースされた『The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-』。配信、CD、アナログでそれぞれ収録曲が違う。曽我部さんがローズレコーズを立ち上げてから15年、同レーベルからリリースした楽曲だけで作ったベスト盤。選曲もマスタリングも全部自分。楽曲紹介は、曽我部さんの私的な思い出とともに語られる。これももちろん全部「自分で書いた」という。 相変わらずDIYなスタンスで作品発表をしていて、このアルバムも配信版ではなんと、全27曲の大盤振る舞い。オマケに完全限定の2枚組アナログ盤もリリースだ。アメコミ調のジャケットデザインは小田島等。90年代から追いかけている人には言わずもがなの名コンビ。音楽の楽しさを全方位的に教えてくれる一枚だ。 思えば、あの頃のレコ屋のポップには「アンセム」とか「マストバイ」という言葉が踊っていたけれど、このベスト盤もまさに、そうじゃないかと思う。 ちなみに、このベスト盤の一曲目は「キラキラ!」。 渋谷にこだわって開催したOCEANS DENIM CAMPで、幸運にも曽我部さんのすぐ隣で聴けた自分にだけの思い出がまたひとつ。 袖で聴いていて大盛り上がりな自分(OCEANS Web編集長・原)。右端はラジオDJのジョー横溝さん。系にせよ、景にせよ、渋谷と音楽はやっぱり切り離せない。先日の公開記事、帰ってきたオザケンの『So kakkoii 宇宙』と、曽我部さんの『The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-』という2つのCDで、そう確証した。