2018年にルイ・ヴィトンのメンズ アーティスティック・ディレクターに就任したヴァージル・アブロー。アフリカ系アメリカ人のヴァージルは、フェンディでインターンをしたのち、ラッパーのカニエ・ウエストが立ち上げたクリエイティブ・エージェンシー「DONDA」を経て’12年にアートプロジェクト「パイレックス・ヴィジョン」で一躍注目を集めた。
同年には自身のブランド「オフ-ホワイト」をスタート。ラグジュアリー・ストリートの中心人物として、モードの階段を急ぎ足で駆け上がってきた。過去にアフリカ系のデザイナーがトップメゾンのディレクターに就任したのは、ジバンシィのオズワルド・ボーテング(’03年)とバルマンのオリヴィエ・ルスタン(’11年)くらいしか例がない。ルイ・ヴィトンとしても、アフリカ系アメリカ人をアーティスティック・ディレクターに迎えるのは初めてとなる。
この3シーズン、ヴァージルがコレクションを通して訴え続けているのは、多様性を意味する言葉、“ダイバーシティ”という概念だ。それを象徴するかのように、初コレクションではレインボーカラーのランウェイを披露。そのプレスリリースには出演モデルとその両親の出生地が記されていた。
そしてヴァージル率いるデザインチームの結束力を讃えるかのごとくシルエットでメンバーを初登場させたセーター……。そう、ヴァージルのルイ・ヴィトンは、どこまでもピースフルで目線が優しいのだ。
だからクラシックなルイ・ヴィトンが好きな人も、ぜひ袖を通してみてほしい。きっと笑顔になれるはずだから。
清水健吾=写真 菊池陽之介=スタイリング 増田海治郎=文 大関祐詞=編集