1980年代中盤〜後半の渋カジ少年・少女たちは、アメカジにこだわったファッションのはずなのに、なぜかフランス生まれのルイ・ヴィトンのバッグが好きだった。時代がバブル真っ盛りという背景もあったのだろう。特に男子に好まれたのが、コンパクトに折り畳める旅行用バッグとして開発されたキーポルで、肩にかつぐように持つのがお約束だった。
そんなキーポルの歴史は古い。’30年代に仏語で「すべてを収納する」意味の「ティアント」という名称で発売され、のちにキーポルと改名された。このバッグの美点は、とにかく軽くて大容量なところ。大きめな50サイズであっても非常に軽量なので、機内持ち込み用バッグとして使っても重さが気にならない。また両側から開閉できるダブルファスナー仕様で、口がガバッと開くから、中のものを見つけやすく取り出しやすいのもいい。
そしてこの「キーポル・バンドリエール 50」は、メンズ アーティスティック・ディレクターを務めるヴァージル・アブローが再解釈した、キーポルのバリエーションのひとつだ。金具はヴィンテージ風のゴールドで、ヴァージルのルイ・ヴィトンを象徴するデザインモチーフのひとつであるチェーンを装着。さらに、側面のレザーバンドを波打たせることで、定番品にひねりを加えている。これだけの変更で、まったく違ったものに見えるのだから、さすがというほかない。
バッグとともに揃えたいルイ・ヴィトンの『シティ・ガイド』は、世界30都市のこだわりのスポットを紹介する、マニアックかつ旬度の高いガイドブック。この10月には、パリと東京を含む10都市が更新されたばかりだ。さて、新しいキーポルと『シティ・ガイド』をお供に、2020年最初の旅計画を立てるとするか……。
清水健吾=写真 菊池陽之介=スタイリング 増田海治郎=文 大関祐詞=編集