DUNHILL ダンヒルアルフレッド・ダンヒルは1893年、父親の馬具専門製造卸会社を引き継いだ。20代前半の若きアルフレッドが目を付けたのは、馬車に取って代わる存在として普及し始めた自動車。当時は野趣溢れるオープンカーがほとんどだったから、雨風をしのぐロングコートや視界を妨げないゴーグル、グリップに優れたレザーグローブなど、ドライブを快適にしてくれるウェアや小物の製造販売を始めたところ、瞬く間に自動車愛好家を魅了する存在に。
1902年には、自動車でアクセスしやすいロンドンのコンドイト・ストリート2に「モートリティーズ」をオープン。それは、自動車の「モーターリング」と権威の「オーソリティーズ」を組み合わせた造語で、エンジン以外のすべてを扱うエンスージアストのための店だった。
その後、ライターなどのタバコ関連製品、そしてスーツなどのプレタポルテに事業を広げ、英国紳士を代表するブランドとなるわけだが、現在も創業時の“エンスーな匂い”はちゃんと残っている。
自動車のパーツをモチーフにしたカフリンクスやタイバーもいいけれど、オーシャンズがリコメンドするのは、右のモダンなトラックジャケット風のブルゾン。マットな黒とのコントラストが印象的な白のステッチは、クリエイティブディレクターのマーク・ウェストン曰く「ヴィンテージカーのシートからインスパイアされたもの」。現代的なラグジュアリー・ストリートとダンヒルの伝統が融合した黒革ブルゾンは、趣味を楽しむ大人にこそ似合うと思う。
増田海治郎(ますだかいじろう)●ファッションジャーナリスト、編集者として活躍。著書『渋カジが、わたしを作った。』(講談社)のタイトルからもわかるように、’72生まれのオーシャンズ同世代だ。
清水将之(mili)=写真 来田拓也=スタイリング yoboon(coccina)=ヘアメイク 増田海治郎、今野 壘=文