vibram謹製のフットベッド
足指と土踏まずにフィットする凹凸。ここまでなら既存のフットベッドと大差ない。注目すべきはかかとだ。なんと、スイコックのかかとには半円状の膨らみがある。お持ちのフットベッドを見てもらえばわかるが、かかとは包み込まれるような形状になっているはずだ。ホールドすることに重きを置いたもので、いまやフットベッドのセオリーになっている。
しかし、考えてみればEVAはもとより加重により沈み込む素材である。甲をストラップでしっかり覆うスイコックはホールド性の面で見てもなんら問題がない。その発想はまさにコロンブスの卵だった。
1年かけてそのフットベッドをつくりあげたスイコックは翌2013年、さらなる進化を遂げる。なんと、イタリアの名門ヴィブラム(vibram)社がフットベッドの製造を請け負うことになったのだ。
「このフットベッドをヴィブラム社がつくったら面白いんじゃないか。ダメ元でオファーしたところ、二つ返事で受けてくれました」。
当時のスイコックはまだまだ無名の存在である。トントン拍子で話が進んだのは、ヴィブラム社がスイコックに可能性を感じたからにほかならない。そしてこれはもう驚かざるを得ないけれど、ヴィブラム社はインソールの製造に着手すべく新たな生産体制を構築した。なぜなら、ヴィブラム社は“アウト”ソールのメーカーだったからである。
ヴィブラム社のオリジナルレシピで完成したフットベッドは、スイコックのアイデアを120%、引き出すことに成功した。
抜きん出る職人気質
機能美は甲のストラップにも見てとれる。ナイロンのストラップにあてたのはネオプレンだ。肌あたりを良くするためのアイデアなのだが、ナイロン×ネオプレンのコンビネーションがもたらす佇まいは、現代に生きる我々が素直に格好いいと思える。
「スイコックのサンダルは常にアップデートを繰り返しています。例えば、くだんのストラップはファーストコレクションに比べて数ミリ、長くなっています。欧米の方々は僕らが想像するよりもずっと甲が高く足首が太かった。彼らがきちんと締められて、僕らの足にも余らない長さ。これを模索して辿り着いた長さです」。
スイコックは靴業界でキャリアを積んだ人間が立ち上げた。靴と足のことを知り尽くしており、そして彼らには抜きん出て職人気質なスタンスがあった。
「デザインを褒められれば、それはそれで嬉しいけれど、何より気を遣うのがプロダクトとしての完成度です」。
生産は中国のファクトリーが担当している。ドレスシューズをつくっているファクトリーで、鍛え抜かれた職人仕事に惚れ込んだという。門外漢のサンダルゆえはじめは苦労したそうだが、いまでは全幅の信頼を置く。
[問い合わせ]ORGY STORE03-6456-4422竹川 圭=取材・文