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平均や常識を疑え

ボクシングの経験や、長年のトレーダー経験が、甲斐さんのメンタルをより強固なものにしていた。常に状況をシビアな目でみつめ、冷静な判断を下す。軌道修正も素早い。甲斐さんの行動力の秘訣はどこにあるのだろうか。
「意思決定のときに人の言う『常識」に引っ張られないことでしょうか。世の中であたかも『常識』のように語られるものは、正規分布における平均のようなことが多い。でもスタートアップの成功確率の分布は正規分布ではない。それなのに“どのスタートアップもこんな感じ”みたいな正規分布の平均を指標とするような意見は意味ないと思うんですよね。よく『そんなの一般的じゃない』とか『普通は』とか言うけど、逆に『〜すべき』みたいな意見を疑うっていうのは大事かなと思っています」。
インタビューシーン
京大生でプロボクサー。それだって世の平均から見ればきっと外れ値のはず。固定観念を疑い、あえて外れ値を選び取る。それこそが【前編】で甲斐さんが語っていた”創業者の非常識”である。
新体制となったフォリオは現在LINEと連携し、「ワンコイン投資」というサービスを展開している。500円から積立投資が可能、来年4月までは手数料無料。株式投資を齧った人なら、「どうやって利益を出すのだろうか」と首を傾げたくなるサービスだ。
甲斐さん自身は今後フォリオのビジネスをどのように発展させていこうと考えているのか。
「決めているのは、フォリオという会社を成功させること。それはつまり同時に社会に価値を提供できている証しですから。それは時間がかかっても諦められないですね。あとは経営者として常に結果を残す人でありたい。やっぱり誰しも得意不得意があって、僕が得意なのはゼロからイチをつくって人やお金を集めること。それ以外の意思決定に関しては、別の人に任せた方がうまくいくこともあるでしょうから、柔軟に自分の立ち位置も含めて会社のために何をすべきかを常に考えられる人でありたいですね」。
今回、社長職を辞したのは、それが会社のためになると信じているからだった。
「会社の正義はひとつ。事業の成長です。そのための意思決定を創業者が怠ってはいけない。みんなが言う『こうあるべき』に合わせる必要も特にないと思います。だって僕たちの目指す世界は『平均』の先にはないんですよ」。
常識に沿って生きているだけでは絶対に見えない世界を、甲斐さんはこれまでもこれからもずっと夢見ている。
 
藤野ゆり(清談社)=取材・文 山本恭平=写真


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