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その田臥さんが父に伝えてくれた内容は、経験者ならではの率直なものでした。
「アメリカに行く決断は間違っていません。絶対に行ったほうがいいです」。
これを聞いてからというもの、周囲のネガティブな意見はまったく気にならなくなりました。

失敗を恐れない覚悟

NBAという世界トップレベルのバスケットボールリーグで勝負しているいま、いつかどこかで壁にぶつかり、挫折するかもしれないという危機感を僕はつねに抱いています。
実際のところ、スタッツが振るわず、契約を解除されてしまった選手を何人も見ていますし、その対象が自分になる可能性はいつでもあるのです。危機感を持つのは、いまよりも高いレベルへ到達するための自分への戒めであり、それを感じることで現状に甘えないようにしているとも言えます。
ただし、危機感はあっても恐怖心はありません。そもそも、恐れを感じて悩んだところで意味はないのです。人が何かに挑戦するとき、必ず壁や挫折に遭遇します。
「すべてが望みどおりにいくわけはない」。
これが僕の考えであり、先のことに一喜一憂せず、いま自分ができる事柄に全神経を集中することのほうが大切です。
スポーツであれ、ビジネスであれ、「何かに挑戦した」という事実には常に価値があります。うまくいかなかったからと言って、挑戦をするまでのプロセスが無駄になるわけではありません。
『「好き」を力にする』渡邊 雄太 著
『「好き」を力にする』渡邊雄太 著
これが僕の信条なので、この先、仮に壁にぶつかってしまったとしても、僕はそれを「失敗」と呼ぶつもりはありません。そんな「覚悟」で僕は毎日バスケットボールに向き合っています。
挑戦することで人は成長し、その過程で多くのことを得られます。行動を起こす前から諦めてしまったら、手にできるものは何もない。
高校時代の恩師であるバスケットボール部の色摩拓也先生が、アメリカに行く前に僕に言ってくれた言葉があります。
「失敗した人とは、成功しなかった人のことではなく、諦めてしまった人のことだ」。
この言葉を胸に刻みながら、僕はこれからも果敢に挑戦していこうと考えています。
 
渡邊 雄太:NBAプレーヤー
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記事提供:東洋経済ONLINE


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