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憧れの日本で輝きを放つゴッホの魂

テオの死後、彼の妻のヨハンナ・ファン・ゴッホ=ボンゲルは、残された小さな子供を女手ひとつで育てながら、ゴッホが残した数えきれない絵を引き取り、一点一点を丁寧に整理した。書簡集も出版し、ゴッホの回顧展を開催するなど、夫テオが信じたゴッホの絵の価値を世に知らしめるため奔走した。
生前は誰も目を向けなかったゴッホの絵を世界がこれだけ認めることになったのは、ヨハンナの功績が大きい。やがてその絵は、ピカソと並ぶ天才と目された“色彩の魔術師”、アンリ・マティスなどにも多大な影響を与え、アートを次なる次元へ導く礎となっている。
そして彼が生涯恋い焦がれた日本は今、世界でも特にゴッホ人気の高い国として知られている。それは、浮世絵のDNAがゴッホの絵のなかに色濃く刻まれていることも関係しているに違いない。ちなみに、1987年には『ひまわり』が53億円、1990年には『医師ガシェの肖像』が125億円で、それぞれ日本の企業と実業家に落札されている。
ゴッホの絵をひと目見るため、「ゴッホ展」には日本中のファンが押し寄せる。その様子をもしゴッホやテオが見たら、彼らは何を想うだろう。
堕ちても堕ちても筆を手放さず、ますます洗練を深めていったゴッホ。魂を削りながら描きあげていったその絵画の数々は、死後150年が経った今もまばゆい輝きを放ち、人類の至宝として愛されてやまない。
 
[イベント詳細]
「ゴッホ展」
東京会場
期間:2019年10月11日(金)~2020年1月13日(月祝)
会場:上野の森美術館
開館時間:9:30~17:00(金、土曜20:00まで)
休館日:12月31日、1月1日
料金:一般 1800円 / 大学・専門学校・高校生 1600円 / 中・小学生1000円
兵庫会場
会期:2020年1月25日(土)~3月29日(日)
会場:兵庫県立美術館
開館時間:10:00~18:00(金、土曜20:00まで)
休館日:月(祝祭日の場合は開館、翌火休館)
料金:一般 1700円 / 大学生 1300円 /70歳以上 850円 / 高校生以下無料
参考資料
原田マハ『ゴッホのあしあと 日本に憧れ続けた画家の生涯』(幻冬舎新書)
原田マハ『たゆたえども沈まず』(幻冬舎)
『日経おとなのOFF』2019年6月号(日経BP)
ぎぎまき=文


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