細身な服=きれいめ。そんな方程式が常識だった世を生きた大人にとって、「ユルいきれいめ」な服は歓天喜地、まさにカラダも心も喜ぶ思いだろう。
自然体を是とする現在の潮流が生まれるはるか前、まだカッチリとした装飾的なファッションの全盛期。それを尻目に、力の抜けた洒脱さを追い求めた気鋭デザイナーたち。彼らが描いていたビジョンとは?
着心地も心も快適な服を目指して、行き着いたプリーツという手法
日本を代表するデザイナー、三宅一生といえば、生地への生半可ではないこだわりでも有名だ。その中でも象徴的なのが、プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ。
糸から作ったポリエステル100%の生地を使い、製品の約1・5倍の大きさで裁断・縫製した洋服にプリーツ加工を施す独自の技法。“女性のための活動的な服”としてデザインされたものだ。
最初に世に示されたのは1988年で、その後’93年に発表されたコレクションからは単独ブランドとして展開され、以降はモードのアイコンとなった。それから20年後の2013年、メンズに向けてこの技法だけで提案される形で始まったのがオム プリッセ イッセイ ミヤケだ。青森大学男子新体操部の演技とともにお披露目されたそのコレクションは、このプリーツの軽やかさやアクティブさを強烈に印象づけた。
今年は初めてパリコレにも参加。シワにならず、軽量で持ち運びもしやすく、ケアも簡単。それでいて、洗練されているという、まさに現代人の要望をすべて網羅した服。袖を通して心地良さを実感するたび、その根幹となるアイデアが30年以上前に生まれたことに驚かされる。
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