ただくつろぐだけでも気持ち良い時間を過ごせ、サーフィンをした瞬間に人生は大きく変わってしまう。ひとつのシーンからそんな海の魅力を発見していくコラム。
今回は「Asian Paradise」
高度な情報化社会。ドローンを使えば山奥にひっそり建つ家すら見つけられる時代に、ハイダウェイなどないように思える。が、あった。日本からわずか数時間のフライトの先にサーファーの桃源郷は存在していた。教えてくれたのはサーファーであり写真家の横山泰介さん。「場所は言えない」という条件で、岬に沿って美しい波がブレイクする写真を見せてくれた。
海は温暖で波のクオリティは良く、海の中にいるサーファーはほぼローカルだけという少なさ。しかもフレンドリーなのだという。やはりサーフィンの醍醐味は、沖から入ってきた波と対話をすることにある。キャッチしてライドした1本に、どのような意味を感じるか。サーフィンの意義は相対的ではないのだ。
しかし世界的にサーファーが増えている昨今、人の少ないグッドウェーブは滅多にない。そんな時代に“醍醐味”を味わう方法は、サーフィンの腕を上げるか秘密の場所を知るコミュニティの一員になるか、どちらかである。
memo居心地の良い場所を人が目指すのは自然の理なのだろう。インドネシアにシメルー島という場所がある。日本からは2回もトランジットを要する場所ながらガラガラの海にグッドウェーブが点在している。その環境の良さからか、シメルー線の航路が増加予定という。アクセス至便となれば桃源郷ならではの姿は変わる。写真の秘密の場所も現状を保てるのはいつまでか。やがて変わるなら「この冬も行くよ」と横山さんのように行動するのが正解だ。
横山泰介=写真 小山内 隆=編集・文