カーナビ機能はトヨタと提携。使い勝手はかなり「シンプル」
先に書いておくと、今回試用したのがリリース直後に近いバージョン1.03であることを差し引いても、先ほど挙げたビッグ3に比べ、LINEカーナビのカーナビ機能は、かなり「シンプル」な仕上がりになっていると思う。
トヨタの「ハイブリッドナビエンジン」を搭載しているので、ルート検索や渋滞情報を加味した到着時刻予測の精度については、当たり前だがまったく問題を感じないレベル。初期バージョンのためか、それともこちらの端末性能の問題なのか、細かい道の案内が省略されてしまう場所もあったが、特に困ることはなかった。
ただし、先ほど「シンプル」と書いたように、ほかのカーナビアプリには装備されているが、LINEカーナビにはない機能が結構ある。たとえば、表示・非表示を選べる施設の数が少なめだったり、“画面上のルート設定操作”では経由地の設定ができなかったりと、少なくともバージョン1.03に関しては、ビッグ3に比べ、機能面でちょっと物足りなさを感じたのが、正直な感想である。
Smart Device Link(SDK)に対応しているそうなので、車載器と連携させれば、車載器の画面でより多くの機能が利用できるようになるのかもしれないが、現時点では詳細不明。カーナビの基本機能については、今後のバージョンアップに期待したいところだ。
LINEのやり取りや音楽など、ほぼすべての機能が音声操作可能
一方、これぞビッグ3にはない、LINEが提供するカーナビならではの魅力と感じたのは、同社のスマートスピーカーでも利用されているAIアシスタント「Clova(クローバ)」の存在だった。「ねぇ、クローバ」と話しかけることでクローバが起動し、カーナビ関連はもちろん、LINEでメッセージを送ったりラジオ(radiko)を操作したりなど、音声だけでさまざまな操作が可能になっているのだ。
例えばカーナビの場合は、「横浜スタジアムに行きたい」と話しかければ現在地からのルート検索が実行され、特に追加の指定をしなければ、アプリが推奨するルートでのナビゲーションを自動的に開始する。
さらに目的地までの道中でコンビニに寄りたくなった場合には、「コンビニまでナビして」というだけで、最寄りのコンビニを探してナビゲーションしてくれる。先ほど「画面上のルート設定では経由地の設定ができない」と書いてしまったが、実は経由地の設定も「東京タワーを経由地にして」というように、音声で指示することができるのだ。
このほか、地図モードの変更や全体ルートの表示など、さまざまなカーナビ操作を音声ですることが可能。従来のカーナビアプリの感覚で使ってしまうと、物足りなさを感じてしまうが、音声操作が基本のカーナビと考えれば、シンプルどころか、かなり「リッチ」な機能を備えているともいえるだろう。
「ながらスマホ」対策の切り札となるか。今後の機能拡充にも期待大
ユニークなのは、カーナビ関連以外の機能が、ほぼ音声でしか操作できない点。音楽やラジオの再生停止程度は画面上でも行えるが、LINEのメッセージ送信や確認などは、画面上でいっさい操作できないしくみになっている。
不便と思うかもしれないが、実はこれもLINEカーナビの重要なメリット。音声による操作を中心とすることで、2019年12月に予定されている道交法改正から実施される「ながらスマホ」の厳罰化に備え、なるべくスマホに触れず操作ができるように工夫されているというわけなのだ。
LINEのやり取りは、スマートスピーカー「LINE Clova(ライン クローバ)」の場合と同様、専用のグループを作成することで、宛先を指定せずともメッセージの送受信ができる。到着したメッセージの読み上げは、グループ宛てのみ可能だ。
車載器に比べ何かと便利なスマホのカーナビアプリだが、走行中にカーナビ以外の機能を使いたくなってしまうのが困ったところ。その悩みを解消してくれるLINEカーナビは、利便性や安全性の面からも、ポスト・ビッグ3というか、新たに四天王の一角を成す可能性は、結構高そうだ。
今後、LINE Payなど他のLINE系サービスとの連携が進めば、ますます存在感を増してくるはず。進化の過程を見届けるという意味でも、ぜひ注目しておきたいカーナビアプリといえるだろう。
石井敏郎=文・撮影