ー東京オリンピックが決まってから、東京のホテルの流れは変わりましたか?安藤 東京オリンピックは大事なイベント、ポイントではありますが、それだけがきっかけで何かが変わったというのはないでしょうね。インバウンドと騒がれていますが、京都や東京などの一部の都市を除けば、宿泊者の外国人比率は10~15%ぐらいなので、基本的に日本人のお客様を意識したホテルがまだ多いのではないでしょうか。
ただ、一方で外国の方を意識したホテルもあります。例えば、外国の方がイメージするようなザ・和!や、和モダンなインテリアを使ったホテルも登場しています。
外国の方はグループで旅行されることも多いので、30〜35平米で5~6人が泊まれるような客室も出てきていますね。海外だとコンドミニアムなどもありますが、日本だとビジネスホテルを2〜3部屋とったり、シティホテルのある程度広さのある部屋を押さえることが多く、どうしてもコストがかかる。
Airbnbなども人気を集めた理由のひとつには、そういったニーズを満たすホテルが少なかったこともあると思いますが、ホテルのホスピタリティはありながら、安く泊まれるファミリータイプのホテルが登場して、外国人旅行者の人気を集めています。日本人でも家族旅行などで活用する方が増えていますね。
ー色々なホテルがあるんですね。今後も東京のホテルは変わっていきますか?安藤 ハードウェアだけを比較すると、デザイン性や趣向性に大差はなくなってきています。それを考えると、今後ホテルは、エンターテインメント性を求められる可能性が高いでしょうね。
すごくオリジナリティのあるレストランが併設されていて、そこでしか味わえないものがあるるとか、ライブやイベント、アートのエキシビションが行われて、そこでしか観られないものがあるとか。もしかしたらコミュニティかもしれませんし、そのホテルに泊まらないと体験できないものが求められる時代になっていくと思います。
また都市部では「仕事×宿泊×アメニティ」がなるべく一箇所で済むものが求められるようになると考えています。サービスアパートメントに近いタイプのホテルも増えていて、レストランよりもホームパーティ、洗濯機がある。
そして、仕事の打ち合わせも施設内でするというスタイル。旅行者のニーズがどんどん変化するなか、東京などのグローバルな都市では、特にその変化を早くつかむ必要があります。
決して、遠いところに行くとか、高い旅館に泊まることだけが旅行ではないということです。ホテルに泊まらなくても食事をしに行ったり、美術鑑賞に行ったり、これだけホテルがあるのでいろいろな楽しみ方ができます。ぜひさまざまなシーンでホテルを満喫してほしいですね。
林田順子=取材・文