ただくつろぐだけでも気持ち良い時間を過ごせ、サーフィンをした瞬間に人生は大きく変わってしまう。ひとつのシーンからそんな海の魅力を発見していくコラム。
今回は「Last Session」
どうやらこの人は、本当に“持っている”ようだ。近代サーフィンのカリスマ、ケリー・スレーターである。確かに11度も世界王者に輝いた男は、大一番となる1戦で何度も勝利をもたらす波を自分に呼び込んだ。その戦いぶりは人知を超え、海を味方にしたと思える光景を見せてきたのである。
そして今、日本のサーフファンは彼の動向に注目している。9月7日(土)から宮崎県で始まるサーフィンの国際大会に、米国代表として出場するのではないかと目されているためだ。同大会は東京五輪への選考会も兼ね、各国の代表選手には出場の義務がある。米国も同様で、しかし本来の代表選手が右膝を負傷。今季絶望となり、ケリーに出番が回ってきた。
彼はサーフィンのメジャー化を望んでいたひとりであり、オリンピック出場への意欲も高い。既に今季での引退を表明しているが、「最後の勇姿は宮崎経由の東京で」となれば、サーフィンに愛された男らしい、見事な幕引きとなる。
memo本来の米国代表は世界最高峰プロツアーにおけるランキング上位3名のサーファーだったが、そのうちのひとり、ジョン・ジョン・フローレンスの負傷で状況が変わった。資格を得たケリー・スレーターは1990年代初めから世界のサーフシーンを牽引し、サーフィンのメジャー化に多大な貢献をしてきた人物。プロキャリア最後の舞台が日本となるか否かは、宮崎県・木崎浜海岸でのISAワールドサーフィンゲームスに出場するかどうかにかかっている。
トッド・グラッサー=写真 小山内 隆=編集・文