「今、東京の街にいる人たちって、みんな同じ格好をしてるよね」
—久しぶりに訪れた東京はどうですか?アーロン 最後に東京に来たのはそれこそ映画が公開されたときだから、ほぼ10年ぶりだね。当時、原宿なんかはすでに文化があったし、 小さくて面白いお店があちこちにあったけど、今は昔に比べて大きなお店が増えてるよね。特にメインストリートは。裏路地はあまり変わってないかな。
—東京にいる人たちはどう?アーロン 正直に言っていい? 昔はメンズカルチャーにオリジナリティとかクリエイティビティが見られたけど、今は、道を歩いてる人はみんな同じ格好をしてるように見えるね。昔はもっと自由だった気がする。そりゃ例外もあるし、以前もメインストリームな格好をしてる人は少なくなかったけど、今はそれがすごく増えた気がする。 でも、それはどこの国も同じだね。ロサンゼルスでもニューヨークでも東京でも。画一化されがちだよ。

—カルチャーで今、いちばん面白いエリアは?アーロン それは常に変わってるよ。最近だと僕はベルリンで多くの時間を過ごしてるんだけど、ベルリンが好きな理由はアンダーグラウンドの文化が強いところ。逆にメインストリームはあまり強くなくて。もちろん良いものも悪いものもあるんだけど、それを取り囲むエネルギーとか熱量がすごくある。パッションがある若いヤツらも多いんだ。
—なるほど。今回のプロジェクトで『ビューティフル・ルーザーズ』のみんなとも久々に会ったと思うけど、話す内容は昔と変わった? 家族の話とか、したりする?アーロン それはしてないかな(笑)。「それ、いいペンだな」みたいな、なんでもないことばっかり話してるし、昔とあまり変わらないよ。アーティスト同士で話す内容は多分、何歳になっても変わらない。何ていうか、1回ハグしたらもう全部が伝わるような感じ。何かの出来事について話すとか、議論するっていう感じじゃないかな。そういう仲間がいることも“Stay Young”のために必要なことかもしれないね。
—やっぱり何歳になっても仲間は大事なんだね。アーロン YEAH! もちろんだよ。僕らの場合、これだけ歴史が長いと仲間ってよりはもう家族みたいな感覚だね。
—最後に。そんなLOSERSたちはWINNERSになったのかな?アーロン アハハ(笑)、どうだろうね? 僕たちの歴史は長い人生をレンズを通して見てるようなもので、簡単に LOSERとかWINNERとかに分けられるものじゃないよ。クリエイティブなものに囲まれた人生を送ることができてるし、こうやって東京にも来れたし、いい家に住むこともできたし、それはある意味で成功だと思うよ。だけど、我々がWINNERなのかどうかは歴史が決めること。まだ誰もわからないんじゃないかな。少なくとも、50周年くらいまではね(笑)。
前編「アーロン・ローズに聞いた、“美しき落ちこぼれ”の10年後とこれから」志賀俊祐=写真 多田小春=通訳 今野 壘=取材・文