「夜中の2時にドアを開けたら、そこにジョニー・デップがいてさ(笑)」
—はじめまして、アーロン。アーロン やあ、はじめまして!
—『ビューティフル・ルーザーズ』が公開された2008年当時、アーロンは何歳?アーロン 今は50歳だから、当時は39歳。もちろん映画のフィルムに映っている内容自体はもっと歴史が長いけどね。
—“ルーザーズ”、つまり落ちこぼれのはずが、今こうして集まっただけでも一流アーティストの同窓会みたいになってますね。この未来は予想できていた?アーロン 映画が公開された頃にはもう、みんな有名になり始めてたよ。“ビューティフル・ルーザーズ”っていうネーミングにした理由はそれより20年くらい前にあって。アレッジドに関わってたみんなはまだ、アーティスト活動とは別に働いてて、彼らのやってることや創ってるものを好んでたのは一部のキッズたちだけ。出資ができるような大人たちには好まれてなかったんだ。みんなメインストリームに逆らってたからね。
—でも、今ではそれがメインストリームに?アーロン そうだね。だから、今振り返ると面白いよ。でも、僕の中でメインストリームに関しては昔からどこか不信感があって。トレンドじゃなくなったらもう終わりとみなされて、ゴミ箱に戻るっていうようなあり方にね。それは今も変わらない。
—アレッジド ギャラリーを始めた当時の思い出を教えてくれない?アーロン いっぱいありすぎて言い尽くせないよ(笑)。あ、でも、面白いことを思い出した!
—なんですか?アーロン 最初マンハッタンのロウワーイーストサイドにギャラリーを開いたとき、僕はそこに住んでもいたんだ。当時はドラッグがはびこっていた地域だったんだけど、ギャラリーの裏にベッドルームをつくってさ。で、ある晩、夜中の2時ぐらいかな? 誰かがドアをドンドン叩くんだよ。眠い目をこすってドアを開けたら、そこにジョニー・デップがいてさ。すごく慌てた様子だったんだけど、多分、何か探してたんだろうな。ここなら手に入りそうだと思ったんじゃない?(笑) そのときは驚いたね。

少しずつ話し始めてくれた、かつてのビューティフル・ルーザーズたちと、アレッジド ギャラリーの話。次回は、“世界的アーティストの知られざる下積み時代”について教えてもらう。
志賀俊祐=写真 多田小春=通訳 今野 壘=取材・文