正しい歩き方と新しい靴選び●歩きたいから靴を履くのか? お気に入りの靴を履きたいから歩くのか? どちらの人にとっても靴と歩くことには密接な関係がある。歩き方もファッションも正しくあるために、知っておきたい新しい靴選び。
正しい歩き方や姿勢を得るためには、自分に合ったスニーカー選びが重要。なんとなくわかってはいても、実際にスニーカーの構造や特徴を自分で理解し、自分に合っているかを判断するのは至難のワザだ。
そこでオーシャンズが読者になり代わって、メーカーへ突撃取材。
まずどこに話を聞こうかと考えていたら、聞こえてきたのは「ニューバランスの新作がもの凄くいい」という声。
確かにニューバランスの履き心地の良さは自分でも体験したことがあるし、実際、ニューバランスを選ぶ人は、何足も同じモデルを履き続けるリピーターも多い。いったいその履き心地の良さはどこからくるのか? そして新作の実力は?
そんな疑問を、ニューバランスのPRスペシャリスト、小澤真琴さんにスバリ聞いてみた。
990シリーズにはニューバランスの理想が詰まっている
——今年は、990のアップデートモデル「990v5」が出て盛り上がっていますが、まずは、この990モデルが特別視される理由から、お聞きしたいのですが。小澤 端的に言えば、990は、ニューバランスがいちばんいいと思えるものを妥協せずに作り継いできたモデルです。オリジナルは1982年に発売されましたが、当時の価格は100ドルぐらいでした。
それまでは、こんなに高額のランニングシューズは世の中にありませんでしたから、初めからこだわりの詰まったモデルだということです。990モデルは、今でもニューバランス会長のジム・デービスが履き心地や機能にOKを出さないと絶対に世に出しません。
——なるほど。では、V5がV4と大きく変わった点はどんなところなのでしょうか?小澤 細かな点はいろいろとありますが、最も大きいのが、アッパーの履き口にあるストラップですね。かかとから繋がって足首回りのホールド感をアップさせています。あとは、ソールのアップデートです。走ることを前提にしたグリップ力はさらに高くなっています。V4よりも全体的に安定性やフィット感も良くなっています。
——V5のソールに採用されている、エンキャップとアブゾーブとはどんなものなのでしょう。小澤 エンキャップというのは、よく素材だと思われている方もいらっしゃいますが、構造の名前です。Uの字の馬蹄のような形をしたポリウレタンの中にEVAが封入されていて、安定性とクッション性を両立する構造です。V5でいえば、踵のところに配置されています。そして、アブゾーブというのは、衝撃吸収性と反発弾性のあるクッション材です。
——エンキャップとアブゾーブは、必ずセットで採用されるのですか?小澤 いや、必ずというわけではありません。ちなみにエンキャップは、80年代の初めに開発されたもので、アブゾーブは、90年代に登場した990シリーズの8代目、998から採用されました。
——なるほど。ほかに履きやすさを追求したテクノロジーはありますか?小澤 ニューバランスのシューズの両サイドにはNマークが付いていますが、あれはデザインとしてだけでなく、甲の周りをしっかりホールドする構造的な意味合いもあります。そして、どのシューズも、つま先には余裕を持たせて足が地面をしっかりと掴んで蹴り出しやすいようなフォルムになっています。踵から甲をしっかりホールドして、つま先は足指が動かせるようになっているのが、“インステップレーシング”と呼ばれるニューバランスの特徴的なスタイルです。
[話を聞いた人]
小澤真琴さんニューバランス ジャパンで長年PRに携わってきたスペシャリスト。自身もランナーとして、国内外のランニングイベントや大会に積極的に参加している。
後編につづく 長谷川茂雄=取材・文