飲食を中心に据えたのも成功につながった。人脈があったからという理由もあるが、それ以外にも2つ理由があったと和田氏。当時、大阪ではすでに雑貨とカフェをてこにした中崎町、アートの空堀と空き家再生による町づくりには先駆事例があった。
だが、どちらもがもよんのテイストではなく、とくにアートだったら地元の人は一生に1つも買うことはないかもしれない。だが、レストランであれば一生に一度くらいは食べに行くだろう。だったら地元の人にも喜ばれる飲食店にしようと考えたのである。また、物販の場合は客が店に入ってきても売れないことは多々ある。ところが飲食の場合には来店=売り上げ。確実に稼げるのである。
最初にお金の話をするのが和田流
空き家所有者を口説くやり方にも、和田氏ならではのノウハウがある。先に借りたい人を見つけておき、それを伏せたまま、交渉に行くのである。そして最初にお金の話をする。
ボロボロな古民家を貸すために耐震補強、ガス、電気その他のライフラインを整備するのに300万円かかるとして、それを月10万円で貸したら3年でもとが取れる。4年目からは年間120万円、10年の契約だとすると720万円。はじめに300万円は必要だが、それが投資できたら10年で720万円になる。維持管理の手間がなくなり、子や孫、ご近所にも自慢できる店ができ、それでお金も入ると持っていくのである。
このくだりを私は足立区で開かれた空き家活用のためのイベントで聞いた。参加者が「最初にお金の話をするなんて!」と最も衝撃を受けていた部分で、この辺りは商人の町である大阪ならではだろう。がもよんでのスピード感ある展開を可能にしたのは、この、金銭的な裏付けがあるという安心だろうとも思う。
最初のお金の話で所有者が興味を示したら、次は「1年で辞めて出ていったらどうなる?」「うまく借りてくれる人が見つけられるか?」などと繰り出される質問に用意しておいた答えを順に出していく。
そんなおいしい話があるかと不審に思っていたとしても、すでに借りたい人までいるとあれば普通はノーとまでは言わない。空き家所有者を口説こうという人は、ここまで用意して臨むべきなのだろう。
もう1つ、古民家飲食店の店主だけでなく、町の人たちをイベントなどで巻き込んできたのも成功の要因だ。がもよんばる、カレー祭り、肉祭り、がもよんフェスなど飲食店が関わるイベントの場合、紹介は必要だが、地域にある店舗は希望すれば参加可能。これによって町全体をアピールできれば、参加店舗にはメリットがある。だとしたら、新規に参入した店舗と仲良くしようと既存店舗も思うはずである。
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