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2014年に過去最強の敵、現る!

そんな昆虫ヒーローを演じる垣原の前に、人生を左右する大きな転機が訪れた。2014年の12月末に、悪性リンパ腫であることが発覚したのだ。悪性リンパ腫とは、白血球の中のリンパ球ががん化した病気で、血液を通じて腫瘍が全身に転移してしまう難病と言われる。
それまで何度となく強敵と対峙するたびに、自らに芽生えた恐怖心に打ち克ってきた垣原。だが、最強の敵である悪性リンパ腫が自らの血液の中に潜んでいることを知ったときは、その恐怖を払拭することはできず眠れない夜が続いた。病を宣告された当時のことをこう話す。

「呆然自失とはこのことで、このときばかりは本当に落ち込みました。入院中、みるみる痩せ細っていく自分を惨めに感じましたし、ミヤマ☆仮面のことも、これからどうしていこうかという不安で押しつぶされそうでした」。
だが、そんなときに立ち上がったのが家族だった。「クワレスの灯火は消さない」と、息子のつくしさんはひとりでクワガタ忍者としてステージに立ち、テレビ出演の代役を自ら買って出た。妻の美香子さんと娘の綾乃さんは父親の不在を感じさせぬよう、いつも以上に会場を盛り上げ父の帰りを待ち続けた。
写真提供・カッキー企画
家族の強力なサポートに感謝しながらも、父親としていつまでも甘えてばかりいるわけにはいかない。そう感じた垣原は、病を克服することを決意。一刻も早くミヤマ☆仮面として復帰すること、そして“大きな目標を持つことによって心身ともに強くなっていくのではないか”と、なんとプロレスラーとして再びリングに立つことを自らに課したのだった。
 

リング復帰そして、未来へ

復帰へ向けたトレーニングを再開した垣原は、2017年8月14日、晴れてプロレスイベント「カッキーライド」でリングへの復帰を果たした。プロレスの世界に入るきっかけとなった恩師の藤原喜明を相手に、約10分間のエキシビジョンマッチを行い鋭い動きを披露した。これだけのコンディションを作り上げるのは、並大抵の努力ではなかったはずだ。それを知るファンたちによる盛大な“カッキー”コールを、垣原は全身で受け止めた。

「鳥肌が立つほど感激しました。ファンの声援は僕にとって何よりの治療です」と話す姿からは、今でも多くのファンに愛される人柄が垣間見える。
垣原は常に明るく前向きに振る舞うため、ついついがん患者であることを忘れてしまうが、食事療法を自らに課している姿を見ると、今でも再発という見えない恐怖と戦い続けていることを改めて思い出させられる。
一方で、プロレスの世界で養ったネバー・ギブアップの精神を持つ垣原なら、きっとこの難病すら克服してしまうように思えてならないのだ。
長尾 迪=写真(本人提供)
僕らは、いつも心のどこかでカッコいい大人でありたいと願う。垣原の力強い生きざまは、まさに「カッコいい大人」そのものだ。自分の家族にカッコいい背中を見せたいと願い、今日もステージに向かう。日本の子供達に自然の大切さを伝えるために、今日もマスクを被る。
「昆虫ヒーロー。ミヤマ☆仮面だ。よろしクワ〜」
今日もどこかで、ヒーロー・垣原賢人の元気な声がこだまする。

 
瀬川泰祐=取材・文


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