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デジタルカメラ、携帯、そしてGショックに出合うまで

ときに仕事に行き詰まったら、社内を散歩した。まだ世に出ていない製品の開発現場を肌で感じられることが刺激に繫がったという。
「開発現場って、みなさんが想像しているようなスタイリッシュな環境じゃない。もっと泥臭かったり、と思ったら和気あいあいと進めていたり。さまざまなチームのデザインを生で見て勉強できるのが楽しかったですね」。
電卓部門を3年ほど経験し、電子辞書のデザインを担当。その後は楽器とプロジェクターを兼任し、デジタルカメラを担当。多いときは5つのプロダクトデザインを同時に任せられることもあったという。デジタルカメラではカードサイズの優れた携帯性と高機能、そこに“タフさ”を加えた「EXILIM(エクシリム)-G」を担当した。
EXILIM G
「当時は耐衝撃の薄型カメラという製品はほとんどない時代。企画を含めてゼロから部品を配置して作り上げていきました。デザイン的にいまだにファンの方から褒めていただけることもある自信作です」。
グッドデザイン賞にも輝いた「エクシリム-G」。実績を重ねるなかで、次に橋本さんが挑戦したのは、当時多くの競合他社が参画していた携帯電話だ。「G’zOne(ジーズワン)」と聞けば、懐かしい気持ちになる人もいるのではないだろうか。
G’zOne
カシオらしい耐水・耐衝撃性能を備えた携帯電話機は、Gショック同様にタフネスを追求したモデルとして、アウトドア好きや建設現場など屋外で働く人々に圧倒的に支持された。
「カメラ、携帯……と“タフネス”をテーマにした2大ブランドを経験し、それじゃあ残っているのはアレしかない! と思って、異動を希望しました。それが5年前。私にとって大きな転換期でした」。
カシオでタフネスといえば、やはりGショック。30代半ばに差し掛かった橋本さんは、ついに憧れでもあったGショックデザインのスタート地点にたった。しかし、そこはこれまでの現場の常識が通じない、規格外の場所だった。
【後編】へ続く
藤野ゆり(清談社)=取材・文、小島マサヒロ=写真



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