連載「隣のオッサンは青いか?」を読む『星の王子様』の著者・サン=テグジュペリのこんな名言をご存知だろうか?
“愛とはお互い見つめあうことではなく、共に同じ方向を見つめることである”既知に富み、オッサン好みの洒落た言葉である。しかし、同じ方向を見ていたつもりなのに、いつの間にかズレ始め、最終的に揉める事態は起こりうる。たまには面と向かって言葉を交わす機会は必要だろう。
とはいえ、日々仕事や育児に忙殺されるオーシャンズ世代。はたして世の夫婦は2人きりの会話時間をどれほど取れているのだろうか? 結婚5年目以上、子供のいる36〜45歳既婚男女200人に聞いてみた。
10組に1組の夫婦は「1時間未満」。一方で70時間という強者も
●1週間で平均何時間、夫婦2人きりで会話をする?(以下、フリーアンサーを集計)
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1時間未満 13.0%・1時間 26.5%
・2時間 11.5%
・3時間〜5時間 23.5%
・6時間〜7時間 4.0%
・8時間〜10時間 12.5%
・11時間以上 9%
※中央値:2時間
10人に1人が、平均「1時間未満」と回答。育児での共同作業はあるだろうが、ひとつ屋根の下に暮らしつつ、夫婦の会話が1日10分にも満たないというのは、少し寂しい。
一方で「70時間」との回答も。1日10時間も何を話すの? と訝ってしまうレベルだが、いずれにしても夫婦ごとの差はかなり大きい様子。総合すると、一般的な会話時間は、2時間ほどのようだ。
夫婦の会話時間と喧嘩の関係は?
と、ここで疑問が浮かぶ。そもそもこれだけ2人きりの会話が少なければ、衝突する事態も少ないのでは? 逆に会話量が多いと喧嘩のきっかけも多いような……。そこで会話時間と喧嘩の関係についても調べてみると、次のような結果を得ることができた。
●夫婦喧嘩をすることがありますか?【平均】
・喧嘩をすることがある 60.0%
・喧嘩をすることはない 40.0%
【会話時間ごとの「喧嘩をする人」の割合】・0〜1時間 62.0%(79人中49人)
・2〜5時間 62.8%(70人中44人)
・6〜9時間 60.0%(15人中9人)
・10時間以上 50.0%(36人中18人)
そもそも、4割の夫婦は喧嘩自体をしないそうだが、会話時間別に分析すると、時間が長くなるに従って、喧嘩する割合は確実に下がっている。
さらに、喧嘩の原因も聞いたところ、“その質”には明らかな違いのあることが判明した。以下で、顕著な違いが見られた会話時間が短い回答者・長い回答者のコメントを見てほしい。
■夫婦喧嘩の原因は? <会話時間「1時間未満」「1時間」のコメント>「夫が何もしない」(女性/38歳)
「相手の意味不明な言動」(男性/42歳)
「すべて私に対する妻の無配慮から」(男性/42歳)
「(夫は)なめてる。世間が見えてない。ラクしすぎ」(女性/43歳)
「夫が急に仕事を辞めてきたり、転職を繰り返して、収入に不安があるときに小遣いは減らされたくない言われた」(女性/37歳)
<会話時間「10時間以上」のコメント>「私の連絡の拙さ」(男性/38歳/10時間)
「自分のわがまま」(男性/38歳/10時間)
「意見の相違だがすぐに仲直りはする」(女性/38歳/10時間)
「疲れているとイライラしてしまうので、愚痴すら聞けなかったり、言いたかったりで、ストレスだと思う」(女性/41歳/14時間)
会話が少ない夫婦は、“相手が原因”と断じる傾向が強く、これは男女ともに変わらない傾向だ。対して、会話が多い人からは、自分の行動を省みたり、家庭環境を冷静に分析したりするコメントが多く見られた。
一概に会話が少ない=夫婦関係が悪い、とは言えないけれど、会話が多くなれば相手への理解が深まるのは当然のこと。さらに「パートナーは自分の鏡」という言葉があるように、会話をすることで自分自身を冷静に分析する一助にもなる。
「夫婦生活が長くなれば、会話はそれだけ短くなる」。そんな定説やカッコつけは置いておいて、妻と向き合う時間を増やしてみると、不満や喧嘩も少しは解消されるはず。今夜あたり、妻と向き合ってみてはいかが?
千川 武=文 アイリサーチ=アンケート協力