スタイリスト、デザイナー、バイヤー、プレス……。青春時代からデニムを愛し、その酸いも甘いも噛み分ける業界の重鎮たちは、今、どんなデニムをどんな風にはくのが気分なのか? 体形的な悩みから、着こなし、洗濯方法までいろいろ訊いてみた。
ウエストオーバーオールズ デザイナー大貫達正さん(38歳)これまでデザイナーとして、公私ともにさまざまなデニムに触れてきたからこそたどりついた境地がある。「無理して流行を追いかける歳でもないから、本当に好きなスタイルを追求したい。自分で作るもの以外だとヴィンテージをよくはきますね。
今は色が薄めのジャストサイズが気になっています」。そんな大貫さんのデニムの着こなしに欠かせない本場のインディアンアクセの数々。そのどれもがスタイルを決定づける必需品なのだ。
キャプテンサンシャイン デザイナー児島晋輔さん(42歳)普段はトラウザーズをはくことが多い児島さん。週末、デニムの出番が回ってくるそうだ。「テーパードした’60年代風のクロップトデニムが長年の定番でしたが、ちょっと飽きてきて、最近はバギータイプが気分ですね」。
デニムを保管する際は、センター部分で折り畳み自然なクリースを付けているそう。「いつもカジュアルな格好ですが、スニーカーは履かないので自然とおとなしいデニムを選びがちです」。
エストネーション メンズディレクター鷲頭直樹さん(45歳)アメカジから入り、ヨーロッパのファッションを知って、今にいたる。そんなデニム遍歴を持つ鷲頭さんは、「キレイにはきたいけど、年齢のせいか体形も変わってきたし、ラクちんさも捨てがたいですね」と貪欲だ。
その“わがまま”に応えてくれるのが、ストレッチの入った漆黒の1本。深めの股上でテーパードシルエットといった好みのツボにもハマった。上下ブラックのなか「絶妙に異なる色をひとつ(サンダルに)使い、緊張感を和らげる」着こなしにも、彼のこだわりが滲む。
ビームス メンズカジュアルディレクター中田慎介さん(41歳)「これまで細いデニムをほとんどはいたことがなかったから、限りなくチャレンジに近い」。ごく最近までルーズなシルエット一辺倒だったという中田さん。デニムのバランスを変えることで着こなしに“鮮度”が加わった。
「着こなしのベースは大好きなアメカジ。パンツがタイツのように見えるのはビミョーだから、ワンサイズ上の31インチを選んで若干ゆとりを持たせています。レングスは長めにとって、クッションさせるのがポイント」。
ベルベルジン ディレクター
藤原 裕さん(41歳)
基本的にデニムはリーバイス501の藤原さん。そんな彼が今ハマっているのがデニムのペンキ加工。「古着で見られるペンキの付着をデザインとして取り入れてみました」。
施工は増田塗装店。経年変化をイメージしたペンキの色やひび割れなど繊細な加工でいつものデニムをインパクトある顔立ちに。「アンクル丈かつ全体のトーンを統一することで、子供っぽく見せないように工夫しました」。
クロ デザイナー
八橋佑輔さん(38歳)
「2タックで、太いクラシックなシルエット。脚の短い人にも似合うと思う。ぴたっとしたのは今の気分じゃない」と語る八橋さん。使用されている糸は従来と同じだが、織りの密度を甘くすることで柔らかな風合いに仕上げている。
「バキッとした質感だと男性的すぎるので、女性受けも良くなるよう、こなれ感のあるデニムを作ってみました」。この女性的なファブリック使いとアプローチは、とても新鮮に映る。
オーティー・アンド・エモーショナル ディレクター清水 聡さん(47歳)アメカジに造詣が深い清水さんイチ押しのウエアハウスのデニムは、ヴィンテージさながらの風合いが特徴。テーパードのアンクル丈をセレクトし、スッキリと見せるのが清水さんの着こなし。
「色落ちしたデニムでも、品良く見せるのが流儀です」。ラフなデニムやキャップ、上品なドリズラーや革靴といった具合に、2つの要素をバランス良く取り入れ、落ち着きのあるデニムスタイルを見事に構成。
サーティーファイブサマーズ プレス信岡 淳さん(44歳)久々に細身のデニムがはきたくなったという理由から、アナトミカの618スリムフィットを購入した信岡さん。今なら断然ジャケットと合わせるのが気分らしい。
「この型番は藍染めで一般的なインディゴ染めよりもムラなく、ゆっくりと色落ちします。それもあって、きれいめの服と好相性。ただ僕は天の邪鬼な性格だから、ありきたりのジャケパンスタイルだとつまらない。そこでプリントTを挿すことで自分らしい着こなしを楽しんでいます」。
恩田拓治、長尾真志、比嘉研一郎、志賀俊祐、高橋絵里奈=写真 戸叶庸之、菊地 亮、黒澤卓也=取材・文