1993年のある日のこと、オフィスに届いた1足のサンプルを囲んで、当時、文京区本郷にあったリーボックジャパンのサンプルルームはにわかに騒がしくなった。
その輪の中心にあったのが、現在もリーボック クラシックのベストセラーの一角に君臨するインスタポンプフューリーである。
空気の入るチェンバーと呼ばれる部分自体がアッパーの一部となった斬新なデザイン、土踏まず部分のミッドソールをすべて取り去った構造と、シトロンと呼ばれる蛍光イエロー、レッド、ブラックを大胆に組み合わせたカラーリングのシューズは、ランニングカテゴリーのフラッグシップモデルとしてリリースされたが、当時のランニング業界の常識では理解できないほどに奇抜なデザインであった。
あまりに革新的だったのと高価格だったからか、小売店からの受注状況はそれほどでもなかったし、デビュー年の1994年は店頭での売れゆきも芳しくなかった。しかしながら翌年に、インスタポンプフューリーは、急遽ハイテクスニーカー・ブームのトップランナーに躍り出ることになる。
いくつかのストリートファッション誌において、今でいうところのインフルエンサーやファッション関係者のお気に入りシューズとして紹介されると、突如ブレーク。さらに雑誌「Cut」の表紙でアイスランドの歌姫ビョークが履いたことで、その人気に拍車が掛かった。
それからは、オリジナルカラーに続いてリリースされたブルー、スペックを一部変更してリリースされたパープルやトリコロールetc……すべてヒット。このあたりはオーシャンズ世代なら既知の通りである。
しかし、最初サンプルが到着したとき、「これは売れないだろう!?」という声のほうが多かったインスタポンプフューリーがストリートシーンでブレイクモデルとなることを誰が予想しただろうか? さらには、インスタポンプフューリーがデビューから25年を経ても高い人気をキープしていることを、誰が予想しただろうか?
そんなインスタポンプフューリーのファーストカラーには、実はオリジナルと呼ばれるモデルの前に半年だけ販売されたプロトタイプモデルが存在していた。
サンプルとほぼ同様のデザインを採用したプロトタイプは、アウトソールの前足部がブラックではなくシトロン、シュータンとヒールのプルタブがない、シュータン中央のReebokロゴの下にベクターロゴが無いなどの違いがあり、3月22日(金)に、このスペックを復刻したモデルが、世界限定1994足でリリースされる。
熱狂的なインスタポンプフューリーのファンはもちろん、スニーカーフリークやファッショニスタにとっても垂涎の逸品。しかもシリアルナンバー付き。一瞬のこのチャンス、ファンは逃すことなかれ。
[問い合わせ]リーボック アディダスグループお客様窓口0570-033-033南井正弘=文