連載「撮りたい、愛でたい、アナログカメラ」 メカの香りが漂うフィルムカメラは、男を夢中にさせるアイテムだ。ただ、一眼レフでは大げさすぎるし、よく見る使い捨てカメラよりこだわりたい。プロダクトとアナログ写真の良さを堪能できる、“サマになる”カジュアルカメラをお届けしよう。まずは、押さえておきたいショップ紹介から。
’90年代後半から’00年代にかけて巻き起こったトイカメラブーム。愛らしいフォルムと写真の風合いにハマった人にとって懐かしいのが、名機「LOMO LC-A+」を世に送り出したブランド「Lomography(ロモグラフィー)」ではないだろうか。
東京メトロ銀座線・末広町駅から徒歩3分。秋葉原の電気街を背にしばらく歩いたところに、日本唯一の直営店「Lomography+(ロモグラフィープラス)」はある。
直営店は2008年、南青山に出店。その後、渋谷へとブームとともに移転し、2013年から現在の場所にある。 300以上のアイテムが揃う、ロモグラフィー直営店 ロモグラフィーは、1992年、当時ウィーン大学の学生がソ連製の「LOMO LC-A」に一目惚れして輸入販売を始めたことに端を発するカメラブランドだ。その後、ソ連崩壊の煽りを受け、オリジナルが生産終了をすることになり、独自に製造を開始。カジュアルなアナログカメラコミュニティとして拡大しつつ、’00年代の日本のトイカメラブームを盛り上げる存在にもなった。
ロモグラフィープラスで販売されているのは、ブランドの原点・LC-Aの改良版「Lomo LC-A+」を始めとした、300以上のアイテム。インスタントカメラ、カジュアルなフィルムカメラ、デジタルカメラにも対応するアートレンズ、各種フィルムなどが所狭しと並んでいる。
ロモグラフィーの代名詞「Lomo LC-A+」(2万8080円)。 フォルムが男心をくすぐるアナログ二眼レフカメラ「Lomo Lubitel 166+」(3万5794円)。 「‘00年代はプラスチックで作られたオモチャっぽいモノ、いわゆるトイカメラがトレンドでしたが、’10年代から現在にかけては、比較的高価格帯のものが人気です。それにアナログカメラ自体が’00年代とは異なり、日本だけの現象ではなく、全世界的なブームになっています」。
そう教えてくれたのは、ロモジャパン・広報の佐々木梨帆さん。近年、デジタルネイティブ世代が中心となり再ブームが到来していたが、その魅力は幅広い層へ伝播し、かつてフィルムカメラに夢中になった世代からも人気を集めている。
店内にはお手本となる作品も多数。機種ごとの作例が見られるため、カメラ選びの参考になる。 「家族写真は、あえてデジタルではなく、アナログカメラを使って特別な一枚を撮りたいという人もいます。最大の魅力はやはりフィルムのザラザラとした粒子感。撮影状況によりますが、写真の四隅が暗くなる“ビネット”が美しく出るのが、ロモグラフィーのカメラの特徴。この味わいも支持される理由のひとつになっています」。
そして、かつてのアナログカメラとは異なる楽しみ方もポイントだ。
「プリントしないことを前提として利用している人も多いんです。現像する際にCD-ROMで受け取ったり、データを直接スマホに送ったりすることもできる。撮影はフィルムで、管理はデータで、お気に入りだけをプリントする方もいます。アナログとデジタル、おいしいとこ取りができるのが現在のいいところです」。
久しぶりのアナログカメラ、選ぶ基準は? プロダクト、撮影した風合いともに抜群だ。すぐにでも買いたくなるが、この店にはあまりに多くのアイテムがあり、迷ってしまう。
「ビギナーであれば、フィルム交換も可能なSimple Use Film Cameraか、インスタントカメラには珍しいガラスレンズ搭載のLomo’Instant Automat Glassはどうでしょうか。こちらはオート露出なので扱いやすい。もちろん、Lomo LC-A+もいいですよ。基準としてはオート露出機能が付いているかどうか。ピントのボケや暗さは味わいのひとつですが、焦点、露出などがすべてマニュアルだと流石に難しいですから」。
Simple Use Film Camera(1680円) Lomo’Instant Automat Glass(1万9900円) ロモグラフィーのモットーは“Don’t Think, Just Shoot”(考えるな、とにかく撮れ!)だという。ファインダーを覗かずに撮ってもいいし、画角なんて気にしない。とにかくあらゆる場面に持ち歩き、撮りまくることが重要とのこと。
持ってるだけで「これ何?」なんて言われるであろう、これらのカメラ。肩の力を抜いて、大人らしい気軽な使い方がいろいろと考えられそうだ。
[ショップデータ] ロモグラフィープラス 住所:東京都千代田区外神田6丁目11-14 アーツ千代田 3331 1F-102 電話番号:03-5817-8597 営業時間:12:00〜19:00 定休日:月・火(及び施設休館日、臨時休業あり) www.lomography.jp/ 小島マサヒロ=撮影 芋川 健=取材・文