あなたは今まで、どんなスニーカーに心を掴まれただろうか。デザイン? 機能? でもそれだけじゃないはず。そこに作り手のセンスやユーモアが光るものにこそ大いに刺激を受けてきたのではないだろうか。それを改めて教えてくれるのがスーパーブランドのスニーカーなのだ。
HERMÈS エルメス
伝統と革新を巧みにミックス、その名も……
ブラック(写真左)、ブルー(写真右)、グレーの3色展開。各11万5000円/エルメスジャポン 03-3569-33001998年にシューズデザイナーに就任し、
エルメス初のスニーカーをリリースして以来、数多くのヒット作を世に送り続けるピエール・アルディ。彼が手掛けた新作は「トーキョー」という、なんとも親近感の湧くネーミング。
柔らかく足馴染みがいい透かし編みニットのアッパーに、ヒールにはカーフやシェーブルといったエルメスが得意とするレザー、昨今よく使われるトワルテクニック=ネオプレン素材を巧みにミックス。春の陽射しに映える爽やかなカラーリングで完成させた。
スポーティで、近未来的なモダニティも兼ね備えるソックスタイプのデザインは、さまざまなファッションが入り交じり、混沌とした“東京”という街でこそ、ひと際輝きを放つ。
GIORGIO ARMANI ジョルジオ アルマーニ
柔らかさと軽さ。そこに潜むアルマーニの哲学
各11万8000円/ジョルジオ アルマーニ ジャパン 03-6274-7070デコンストラクテッド(非構築的)で、ライトウェイト。ジョルジオ・アルマーニがジャケットやスーツを手掛けるときと同様の解釈で作り上げた本作。シボの入った上質なディアスキンは驚くほどの柔らかさで、履いた瞬間に足に馴染むのを実感する。
そして軽量な「エクストラライトソール」を使用。履き心地に配慮しつつも、極限まで削ぎ落としたデザインからは、常に脇役に徹し、着る人自身を最大限に美しく魅せるというアルマーニの哲学が垣間見える。
ERMENEGILDO ZEGNA COUTURE エルメネジルド ゼニア クチュール
クラフツマンシップ、そして我々のセンスも楽しむ
8万5000円[カスタマイズは10万2000円〜]/ゼニア 03-5114-5300近年、スポーツ&ストリートなデザインを取り入れたフレッシュなエルメネジルド ゼニアを象徴する一足が「チェーザレ」だ。
アッパーのメッシュ素材と軽量ラバーソールの採用で、見た目のボリュームに反した軽さを実現。そしてクラフツマンシップの象徴である“ステッチ”からインスピレーションを得た「XXX(トリプル エックス)」のロゴは、サイドだけでなく、ソールの溝にもあしらわれ、妥協のないデザイン性を感じさせるのだ。しかもこちらのモデルは、限定店舗にてスタートしたフルカスタマイズサービスも可能。我々のセンスも存分に盛り込めるというわけだ。
FENDI フェンディ
太陽の光を浴びると現れる、その二面性
11万円/フェンディ ジャパン 03-3514-6187オールドスクールなフォルムに、色を排除した真っ白なトーン。一見シンプルなカーフレザーのアッパーには、実は特殊塗料が用いられ、日光に当たると“FℲロゴ”がイエローに浮かび上がる。
こちらの「ファンシー フェンディ」シリーズの新作には、ブランドのDNAにある“デュアリズム(二面性)”が表現されているといえよう。ファッションのみならず、何事も一辺倒では退屈。普段見せないもう一面をチラッと覗かせてこそ、深みが出る。そんな隠微な魅力が、太陽の光によって現れるなんて、なんともウィットに富んでいて惹かれてしまう。
DIOR ディオール
初仕事は男がトキメくあれこれを詰め込んで
各13万5000円/クリスチャン ディオール 0120-02-1947今世界が最も注目する、メンズ アーティスティック ディレクターに就任したキム・ジョーンズのファーストコレクションから届いた「コンバット」。ヌバック製チャッカブーツのアッパーに、スニーカーソールを搭載。
加えてソックスタイプのインナーやパラコード調シューレース&ストッパーなどのアウトドアライクなディテールや、スポーティなヒールカウンターの蛍光パーツ使いなど、キムらしいミクスチャー感が満載だ。ストリートを体現してきた彼らしい、初仕事にして男がトキメく要素が全部盛りというアプローチ、僕らは大歓迎なのだ。
SAINT LAURENT サンローラン
アメリカ&ヴィンテージに想いを馳せた仕上がり
各10万円/イヴ・サンローラン 0570-016-6552019SSのショーはクリエイティブ・ディレクター アンソニー・ヴァカレロにとって初のメンズ単独ショーで、NYでの開催も話題に。そのテーマとした「’70年代」や「アメリカ」に呼応してリリースされたのがこちら。
オーセンティックなハイカットモデル「ベッドフォード」がベース。コットン地にペイズリーのバンダナ柄を配したり、ウール地のメキシカンジャカードを使用したりと、テーマをストレートに表現した。そしてリアルヴィンテージと見紛う手作業でのユーズド加工には、アメカジライクな雰囲気を実直に追い求める熱意までも見て取れる。
GUCCI グッチ
ダスティ加工しても上質さを失わない底力
11万5000円/グッチ ジャパン 0120-88-1921既成概念やカテゴリーにとらわれず、自由な発想で
グッチに新しい風を吹き込んだアレッサンドロ・ミケーレ。古着店で見かけるような懐かしいアイテムを作るのが得意で、この「スクリーナー」も彼の代表作に相応しい。
’70年代のヴィンテージスポーツスタイルから着想を得たもので、レザーアッパーに施したダスティ加工、タンのヴィンテージロゴにより、いっそうレトロな雰囲気が高まった。しかし、素材の上質さ、美しいカラーリングにより、ただ履き込んだだけに見せない、そこはかとなく漂うラグジュアリーさにグッチの神髄を感じる。
渡辺修身=写真 石黒亮一=スタイリング 谷中龍太郎=文