1992年に公開された映画『リバー・ランズ・スルー・イット』で観たアメリカ・モンタナの広大な自然と、優雅にフライフィッシングに興じるブラッド・ピットの姿は、いつまでも心の奥底に焼き付いている。あれから30年近く経ったけれど、その憧れはやはりなくなってはいない。
忙しないウィークデイに、突発的にカントリーライフがしたくなる衝動は誰にでもあるかもしれないが、それを実行するのは難しい。だけど週末に釣りに出かけることは、誰にだってできる。東京・水道橋にある釣り具店「ハーミット」の店主、稲見一郎さんに今すぐ準備すべきものを聞いてみた。
「アブ・ガルシア」×「エレクトリック」のロッド
スウェーデン生まれで同国王室御用達でもある老舗釣り具メーカーと、カリフォルニア生まれの横ノリ系小物ブランドの異色コラボ。完成したロッドは、フライフィッシングよりもビギナー向けといわれるルアー(疑似餌)フィッシング用。フライフィッシングの前に、まずは自然や魚と触れ合っておくことも大切だ。
「アート・オブ・アングリング・ジャーナル」
魚が捕食する水中に棲む虫などに似せて、動物の毛や鳥の羽根などを使って毛ばり(フライ)を巻くことをタイイングという。その工程と、出来上がった毛ばりはまさにアートといえる。ディープで美しい世界を1冊にまとめた珠玉のヴィジュアルブック。
「シムス」のウェーダー
シムスは、フライフィッシング界で最も有名なブランドのひとつ。川の中へジャブジャブと入って行く際に着るウェーダーは、着たときのシルエットの美しさに定評がある。素材にゴアテックスを使っているから、歩き回って汗をかいても蒸れの心配は皆無。ちなみに『リバー・ランズ・スルー・イット』の舞台にもなったモンタナ州で作られている。足元に合わせる専用のシューズは別売り。
「サウス2 ウエスト8」と「マンズクラフト」のランディングネット
希少な銘木を削り、1本ずつ手作りで表情豊かに仕上げられたランディングネット(魚をすくう網)。左は福岡の家具職人の手により丁寧に仕上げられるマンズクラフト謹製。右は手編みネットをスパイラルパターンにタイダイ染めした一点物。
「スコット」のロッドと「ハーディ」のリール
フライフィッシングはロッド(釣り竿)に、フライラインと呼ばれる釣り糸を通して、その重さだけを利用して毛ばりを飛ばす。だからロッドが最も重要なギア。イギリス生まれのスポーツフィッシングではあるけれど、フライフィッシャーマンは自然豊かなアメリカに憧れる。コロラド生まれのメーカー、スコット は、とりわけ信頼度の高い老舗。入門としては、5万円台あたりから始めるのが妥当なのだとか。クラシックタイプのリールを付ければ、気分も盛り上がる。
ロッドのロゴはクラフトマンの手書き。だからそれぞれが微妙に異なるところに味と温もりがある。基本的にはスコットのロッドは、故意に破損させたものでなければ、オーナーは生涯保証を約束される。そんな実直な精神もウリ。
「コフラン」のベアベル
フライフィッシングのリスクのひとつが熊との遭遇。音で人間の存在を知らせることが熊除けになるのだとか。アクセサリーとしての側面もあるから、センスのいいものを選んで。
「エイアンドエフ」のバンダナ
上のサーモン釣りのフライを描いたバンダナは、釣りスタイルの華やかなワンポイントに。下の釣り糸の結び方を説明したバンダナは、心強いカンニングペーパーになる。
鈴木泰之=写真 遠藤 寛=スタイリング 川瀬拓郎、長谷川茂雄=編集・文