知らなきゃ男が廃るが、知ってりゃ上がる。気にするべきは、顔のシワより脳のシワ。知的好奇心をあらゆる方向から刺激する、カルチャークロスインタビュー。
帰るところがあると思うと、強くなれる気がするんです。
北海道を代表する俳優から、今や日本を代表する俳優として、映画やテレビドラマなど多方面で活躍する大泉 洋。故郷の北海道を舞台にした映画『そらのレストラン』では、妻と娘の3人家族でチーズを作る酪農家、設楽を演じている。
チーズ作りがうまくいかず、もう諦めようかと悩むとき、亘理の心の支えになるのは家族や地元の仲間たちだ。映画では、本上まなみ、岡田将生、マキタスポーツ、石崎ひゅーいなど多彩な顔ぶれが大泉を囲む。
「この物語の登場人物には、それぞれモデルになった方がいるんです。その人たちは『やまの会』というのを作っていて、皆さん畑をやったり、豚を育てたりして良いものを作っている。お互い理解し合いながら、ライバル関係みたいな感じなんですよね。亘理のモデルになった村上健吾さんには、撮影前に食事をして、いろんな話を伺うことができました」。
そして、大泉は撮影のために初めてチーズ作りに挑戦。その面白さに惹かれたという。「いつか娘と作りたいと思いました。牛乳が固まった“カード”をこねる工程とか、絶対に喜ぶと思うんですよ。それに作ったチーズを保存してくれるんです。10年後、娘が20歳になったときに一緒に作ったチーズを食べたら最高に楽しいでしょうね」。
時間があれば娘のためにパスタを料理することもあるという大泉は、「パパのパスタがいちばん美味しいって言ってくれるんです」と話し、照れ笑いを見せた。
「亘理みたいに自然に寄り添い暮らしていると、毎日、家族と一緒にご飯を食べられるんでしょうね。都会で働いているお父さんたちは、そういうわけにはいかない。僕も家族と食事を楽しむ時間がなかなか持てなくて、亘理が羨ましいです」。
愛する家族や仲間と、やりたい仕事に打ち込む。亘理の生活は男にとって理想といえるかもしれない。大泉も北海道の大学時代から在籍する劇団「チーム・ナックス」に席を置いて仲間たちと公演を行い、東京でも精力的に活動する。はたして仕事とどう向き合っているのか。
「まあ、仕事は大変ですよ。皆さんもそうだと思いますが、自分の仕事に100点なんて簡単にはつけられない。“きっとみんなそうだろうな”と思いながら頑張るしかないですよ。でも家族や友達がいることで“自分はひとりじゃない”と思えることは大きい。僕はとても弱い人間なので、自分には帰るところがあると思うと強くなれる気がするんです」。
大泉の活躍の陰に家族あり。男にとって、家族は守るものであり、同時に自分を守ってくれるものなのかもしれない。
『そらのレストラン』監督:深川栄洋/出演:大泉 洋、本上まなみ、岡田将生、マキタスポーツ、高橋 努、石崎ひゅーい、眞島秀和ほか/配給:東京テアトル/ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国ロードショー公開中
https://sorares-movie.jp『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』に続く、大泉洋主演の北海道映画シリーズ第3弾。実際に北海道・せたな町で循環農業に取り組む自然派農民ユニット「やまの会」をモデルに、チーズの魅力と強い仲間の絆が描かれる。
PAK OK SUN(CUBE)=写真 勝見宜人(Koa Hole inc.)=スタイリング 白石義人(ima.)=ヘアメイク 村尾泰郎=取材・文