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言葉はわからない。門前払い。でも諦めずにアタックし続けた結果……


「日本でコシャリを知ってる人なんていないから、まあエジプト行くしかないなと。で、前に現地で働いたことのある友だちに、エジプトにいるエジプトの人をひとり紹介してもらいました。事前の準備はそれだけですね(笑)。あとは、その人にカイロ市内を案内してもらいつつ、有名店を紹介してもらって……現地での準備はそれくらいでした」。



紹介といっても店とつないでくれるわけではない。単に「ここが美味しい店だよ!」って教えてくれるだけ。観光ガイドと変わらないのだ。あとは自力でアタックあるのみ!

「アラビア語はまったくしゃべれません(笑)。片言の英語とジェスチャーで、“コシャリの作り方を教えてください”って、30軒ほど周ったんですけど全滅。そりゃそうですよね。いきなりアポも何もなく店に来て“レシピ教えろ”って無茶苦茶ですよね。外国人とか関係なく、そんなのまあ無理でしょう。いろいろやりましたよ。間違えたふりして厨房に入っていって、何となくノリで“それどうやって作るの?”みたいに聞こうとしたり(笑)。めちゃくちゃ怒られましたけど」。

毎日毎日、町の様々な有名店から次々と門前払いを食らい続けて、とうとう10日目。カイロ市内の老舗コシャリレストラン『LUX(ルークス)』からOKが出るのである。

「たまたま支配人みたいな人がいて、“いいよ!”って。でもその日はもう仕込みが終わっていたので、明日また来い、と。それで次の日に行ったら、その人はおらず、当然厨房にはなんにも話が通っておらず、“お前誰や、帰れ!”って(笑)。

でもここで諦めると、またいろんな店を巡ることになるので、グイグイいかないと! って思って食らいつきました。毎日毎日顔出して。当然なんですけど“アラビア語喋れるようになってから来い”とかも言われましたよ。それでもとにかく通い続けてたら、見るに見かねたのか厨房の人が“もういいよ、入っていいよ”って」。



コシャリはシンプルな料理だ。ベースとなるのはピラフとトマトソース。茹でたマカロニ、ひよこ豆、フライドオニオン、ローストチキンをトッピングし、混ぜて食す。シンプルだからこそ、素材や調理のわずかな違いで、味が大きく変わってしまう。

言葉もわからない異国の厨房で、調理技術もさほどない須永司は、とにかく「見て覚える」ということを実践した。



「もう知らない食材だらけでしたが、身振り手振りで“それなんですか?”って聞いても、アラビア語で返してくるからわからない。緑の葉っぱを“クズバラ!”とかって言われて、かたちとか必死で覚えて。結局『LUX』には1カ月ほど通いました。ビザの滞在期間ギリギリまでいて、なんとか基本のコシャリの作り方を習得することができたと思ったんです」。


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