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2019.01.11

ファッション

家でできるの?機能は落ちない? アウトドアウェアの「正しい洗濯術」

激しい雨でもしっかり防ぎ・不快な汗はしっかり発散してくれる高機能なアウトドアウェア。今日も急に天気が荒れたけど、コイツのおかげで凌げたぜ。
だけど、待てよ。雨で濡れた&汚れたこのアウトドアウェア、どうすりゃキレイになるんだろう? なにせ水を防いじゃうのだから、普通の洗濯機には荷が重いんじゃないだろうか。

せっかく高機能なものを持っているなら、しっかりケアまで入念に。とはいえそのハイスペックゆえ、洗濯ひとつ取っても、何かと制約が多そうに感じるのもまた事実。
実際のところ、どうやって管理するのがベストなんだ?
餅屋は餅屋、アウトドアの名店「Mt.石井スポーツ」に尋ねてみた。
 

大切なのは洗剤!? 機能性アウトドアウェアを洗う際の落とし穴

「大半のアウトドアウェアは自宅で洗えますよ」。
サラッと言い切るのは、Mt.石井スポーツ新宿ビックロ店で主任を務める安達伯陽さん(36歳)。その具体的な方法とは?
こちらが安達さん。自身も登山やキャンプが趣味。汚れたウェアやギアを妻が洗濯してくれる場合も、洗濯カゴには直接放りこまず一度風呂場で軽く洗うなど、汚れとパートナーへの配慮は万全。
「基本は洗濯機です。ただ、シェルの素材などによっては手洗いしかできないものもあるので、洗濯表示は必ず見てください」(安達さん ※以下カッコ内はすべて)。
はい、わかりました! では具体的に、何を用意すればいいんですか?
「防水・透湿素材のアウターやパンツをはじめ、ほとんどのアイテムはこれだけ揃えておけば大丈夫です」。
左●ホルメンコールの「ハイテクプルーフ」 300ml 1500円 中●ファイントラックの「オールウォッシュ」420g 1250円。ともに全国のMt.石井スポーツで購入可能(一部取り扱いのない店舗もあり) 右●アイロンは一般的な家庭用のものでOK。
え、これだけ? 特殊な道具や機材は必要なかったのか……。でもこの洗剤、普通のものとは何が違うんですか?
「最大の特徴は、洗剤では初めてキレート剤というのを配合したこと。これによってアウトドアウェアにつきやすい、しつこい泥汚れや皮脂、ニオイがかなり落ちるんです。あとは、成分に柔軟剤や蛍光剤、漂白剤を含まないのもポイントですね。実はここが家庭で洗う際の落とし穴で、この成分が入っている一般的な洗剤だと、すすいでもこれらが生地に残ってしまって、せっかく撥水や防水のシェルでも、表面に水を留めやすくなっちゃうんです」。
なるほど! ちなみに、これでアウトドア仕様のダウンやフリースなんかも洗えたりするんでしょうか?
「フリースは洗えますけど、ダウンは羽毛専用の洗剤が必要です。でも洗剤さえ適切なものに変えれば、防水・透湿素材のウェアやダウンウェアも家庭で洗えるものがほとんどですよ。でも、やっぱり柔軟剤や蛍光剤、漂白剤は使わないようにしてください」。
 

自宅での洗濯で重要なのは、意外な“すすぎ”

適切な道具を使えば、自宅でも洗えることは理解しました。では、具体的な洗濯の方法を教えてください。
「基本的には裏返して、ネットに入れられるものは入れるようにしてください。そうすることで表地がダメージを受けにくくなるので。あとは通常の洗濯とほぼ同じです。強いて挙げるとしたら、すすぎを多めにすること。あと、ちょっと違う意味で大事なのが、防水や強撥水のものは脱水を省くこと」。
洗濯は40℃以下ぐらいのぬるま湯で行うことで、より洗浄効果が上がるそう。そこも通常の洗濯と同じだ。すすぎは洗剤の余計な成分が残らないようにするためで、脱水を避ける理由はこうだ。
「何せ水を通さない素材なので、そのまま脱水をかけると水が抜けず、水の重さと遠心力ですごいことになります。僕も以前やってしまったことがあるんですが、あのときは洗濯機が暴れて暴れて、壊しかけました(笑)」。
日本発のアウトドアブランド、ファイントラックの機能性ウェアには、生地へのダメージを避ける専用の洗濯用ネットが付属するものもある。
確かに束の間の休日に暴れる洗濯機は見たくない。ではすすぎまで終わったあとの段取りは?
「今度は形を整えて、日陰で吊り干ししてください。天日のほうが乾きは早いんですが、機能素材によっては紫外線の影響を受けやすいものがあるので、そのほうが安全です。いちばんの理想は乾燥機にかけることです。すぐに乾くのはもちろん、この後に出てくる熱処理の工程を短縮できるので。ただ、熱のこもった乾燥機に放置したままだと変質・変形につながるので、乾燥が終わったらすみやかにウェアを取り出すことをお忘れなく」。
こちらのテルヌアのパンツは、Mt.石井スポーツのスタッフさんの私物。登山でぬかるみを通ったそうで、ご覧の汚れよう。汚れを放置して定着させてしまうと機能低下につながるので、自宅で早めの“洗濯”を行うのは、鉄則なのだ。
ちなみに乾燥機にかける時間の目安は、ゴアテックスのシェルなどで20分程度とのこと。ここでは、とりあえず陰干しを……。時間が経って、さぁ乾いた。しかし、クローゼットにしまうのはまだ早い。

 

機能を長持ちさせる、洗濯後のスプレーとアイロン

「乾燥したら、次にはっ水スプレーを吹きます。僕が使っている『ハイテクプルーフ』はフッ素系のもの。ほかにシリコン系の防水スプレーもあるんですが、透湿性が損なわれやすいので、あまりオススメしていません」。
スプレーは上を参照。
「表面に塗る液体状のものもあって、そちらでも良いと思います。ただ、スプレーだとバッグやシューズにも使いやすいので、個人的にはオススメですね」。
スプレーはムラなく、全体にしっかりと。そして、いよいよ最後の工程に……ってアレ? 安達さん、アイロンは何に使うんですか?

「防水・透湿のシェルには実は熱処理が必要で、家庭だとアイロンが使いやすいですよ。なぜ熱を当てる必要があるかというと、防水・透湿性ウェアの表地には“撥水基”と呼ばれる細かい柱のようなものがあるんですが、着込んだときや洗濯後はその柱が寝て、撥水性が落ちてしまう。だから熱でそれを起こしてあげて、撥水機能をもとに戻す必要があるんです」。
「アイロンをかける際は低温で、直接ではなく当て布を使うこと。特にナイロンやポリエステルなどの素材は高温を直接当てると変質・変形しやすいので要注意です。先ほどの『乾燥機が理想』というのは、このアイロン作業が短縮できるからです」。
スプレーとアイロンの順番は逆でも良いが、「スプレーが先のほうが熱でフッ素が固着するため、より効果的な気がします」と安達さん。
こうして見ると、多少必要な工程や道具はあれど、“洗濯→陰干し→アイロン”と通常の洗濯とあまり変わらない労力で、アウトドアウェアも自宅でケアできるのだ。
愛着たっぷり、自慢の高機能なアウトドアウェア。大事に手入れをして、今年も来年も活躍しまくっていただこうじゃないか。
 
[取材協力]
Mt.石井スポーツ 新宿東口ビックロ店
03-5312-9550
www.ici-sports.com/
岡部東京=写真 今野 壘=編集・文


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