知らなきゃ男が廃るが、知ってりゃ上がる。気にするべきは、顔のシワより脳のシワ。知的好奇心をあらゆる方向から刺激する、カルチャークロスインタビュー。
「公私を使い分けられないから、私はいつでも私のままなんです。」
なぜそこまで人生を、軽やかに、キラキラと生きられるのか。明と暗は表裏一体ではないのか。そんな疑問を吹き飛ばすエネルギーが木村カエラの新しいミニアルバム『¿WHO?』にはあった。きらめくガールパワーで時代を牽引し続けてきた彼女らしい、激しくポップでカラフルな世界観が詰まっているのだ。
「公私のチャンネルを使い分けられる人もいるけど、私はいつでも私なんですよね。歌詞も自分の経験を踏まえないと書けないし、自分のままの表現しかできないんです」。
嘘がないから、彼女の歌は真っすぐ聴き手の心に届く。彼女ならではの姿勢と魅力は2004年に19歳でメジャーデビューしたときから変わらない。今も世界をポジティブに捉え、本作の1曲目となる個性の大切さをテーマにした「COLOR」では、個性は自由で素敵なものだから、もし誰かと違ったとしても恐れることはないと、力強く歌い、聴く者に勇気を与えてくれる。
「歌詞作りはとことん悩みます。悩んで悩んで、ようやく完成したときには、何かがスーッと体から抜けていく感じになるんです」と言うが、それは身を削ってゼロからイチを生み出しているからにほかならない。
「経験の蓄積と抜けていった何かの量が見合わないと、自分の中身がスカスカになってしまうのでインプットは重要ですね。意識して映画を観たり、美術館に行ったりして、新しい刺激を受けるようにしています」。
家でも無為に過ごさない。聞けば、足早に通り過ぎていく日々の暮らしにおいて小さな非日常を見つけ、積極的に楽しんでいるのだという。
「1日の終わりにお酒を飲んだり、美味しいチョコレートを食べたりといった、本当に小さなことです。でも、そのちょっとした時間があることで、毎日は違った1日になるんです。もっと時間があるときは、家の壁に落書きしたり、ホームセンターで買ってきた材料で家具を自作したり。ホームセンターは大好きですね。店員さんと仲良くなったら会話もするし、楽しく過ごせるんです」。
年を重ね、インプットされる刺激に変化があったのか、近年は子供や何げない日常への温かい眼差しを感じさせる作品が増えた。絵本作家としてのデビュー作『ねむとココロ』や、本作に収録された同名映画の主題歌「ちいさな英雄」などは好例だ。
「大人になって、自分以外の人のことも考えて行動できるようになったんでしょう。でも、若い頃に特有だった、周りを見ないで突っ走る感じも良かったなぁ(笑)」。
悪戯っぽく語る言葉とは裏腹に、その表情には成熟した大人ならではの優しさと充実感が溢れていた。
『¿WHO?』今回の5曲入りミニアルバムには新曲「COLOR」や、JRAのCMソング「HOLIDAYS」、映画『ちいさな英雄』のエンディングテーマなどを収録。彼女の伸びやかなボーカルの魅力が詰まった1枚に仕上がった。また彼女自身が「子供の頃から大好きな歌」と語る「Tomorrow」のカバーも必聴!
柏田テツヲ(KiKi inc.)=写真 白山春久=スタイリング 足立真利子=ヘアメイク 美馬亜貴子=取材・文