「好配色」。手元にあるいくつかの辞典には掲載されていなかった。ある種、ファッション誌が作ったとも思われるこの造語は、言い得て妙な説得力のある言葉だ。おそらく(推測で恐縮だが)、’90 年代のストリート系ファッション雑誌が、スポーツウェアやアウトドアウェアで、配色が良いものをそう表現したのだろう。
とりわけアウトドアウェアの好配色は、抑えめなトーンの掛け合わせから、ビビッドカラーを利かせたものまでバリエーション豊富で、目で楽しませてくれて、袖を通すとワクワクさせてくれる。例えば、地味で無難な冬のコーディネイトに、好配色のアウトドア由来のトップスを加えてみると、その見た目が劇的に新鮮で楽しいものになる。
好配色は、好都合だ。
21世紀のシェルアウターは「山・街両用着」だ
オーシャンズ世代はスノーボード第1世代だ。1992、’93年は日本のスノーボード元年といえるが、あの頃はスノボードウェアを街で着るなんてありえなかった。そのことを考えると、最近の山用・雪用のシェルアウターはデザイン面も機能面も優秀すぎる。
このホグロフスのフリースキー用パーカは、まさに。ゴアテックスや雪崩救助システムで知られるレコの再帰反射リフレクターといった本格仕様にして、ベージュ×オレンジの配色はどこかレトロなマウンテンパーカのようで、街で着ても最高に似合う。
ちょいと地味めなスタイルを一変させる’90sな配色
毛脚の長いフリースと、シルエットが太めのチノパンツ&オールブラックのコンバースのスニーカー。この上質だけど地味めなコーディネイトに華を添えるにはどうしたらいいだろう? 答えは、好配色のアウトドアブランドのアウターである。ターコイズ×グレー×オレンジのザ・’90sな配色のイタリアンアウトドアブランド、モンチュラのスキージャケットを羽織れば、ほら、見違えたでしょ?
定番の銘品を旬に変える魔法のアウター
ジョン スメドレーの定番ポロセーターに、ミリタリー仕様のチノパンツ、ニューバランスの「M1500」。どのアイテムも時代に左右されない銘品のコーディネイトだが、もう少し遊びが欲しい気もする。で、登板させたいのが、パープル×ブラックの切り替えが印象的なマウンテンハードウェアのプリマロフトを使ったジャケットだ。これだけでグッとモダンな印象になる。
あのオジサマ好みすら現代アウトドア服で新鮮に
テーラード系ファッションの今季トレンドは「ブリティッシュテイスト」。カジュアルスタイルだったら、ガンクラブチェックのトラウザーにはオイルドジャケットあたりを合わせたくなるが、そこにハイテクで配色のいいダウンジャケットを合わせるのがオーシャンズ流。足元をヴァンズのスニーカーで軽く仕上げれば、オジサマ好みと一線を画す新鮮なスタイルが一丁上がり!
テイストのミックスを巧みにまとめる好配色
モックネックのスウェットシャツ、フィル ウエスタンディテールのトラウザー、そしてトレイルランニング用スニーカー……。このジャンルを超えたハイパーミックスコーディネイトに生地を2枚合わせたチャムスボンディングフリースパーカを。パンツとスニーカーに色を合わせながら、鮮やかな裏地を挿し色として利かせるのが、テクニックだ。
清水写真事務所=写真 荒木大輔=スタイリング MASAYUKI(The VOICE)=ヘアメイク 増田海治郎、加瀬友重、今野 壘=文