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中学校にはもちろん鈴入りのボールはない。見ると、バスケットボールをスーパーマーケットのレジ袋で包み、転がすと音が出るように工夫してある。4チームに分かれて、手ぬぐいで目隠しをして開始。
音が頼りの競技なので、試合が始まると、シーンと静かにしなければならない。最初は遠慮がちだったが、得点が入ったり、ボールを防いだりすると、拍手と歓声、ため息が少しずつ出るようになり、だんだんヒートアップしていった。楽しそうだ。
バスケットボールにレジ袋をかけて音が出るように工夫していた(写真提供:日本財団パラリンピックサポートセンター)。
「I’mPOSSIBLE」は、IPCの開発を担う「アギトス財団」と、日本パラリンピック委員会(JPC)、日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)が共同開発した。国際版を基に、日本の学校教材として使いやすいように、JPC、パラサポ、ベネッセこども基金が共同で日本の学校現場のニーズに合わせ、編集したのが日本版だ。
教師用ハンドブックや指導案、資料DVDなどがセットになって、昨年は全国の小学校約2万校に小学生版1セットずつを無償配布、今年6月からは中高生版も作り、約3万6000の全国の小中学校や高校、特別支援学校に無償配布した。

マセソン美季さんの思い

公開授業には「I’mPOSSIBLE」の開発で中心的な役割を担ったマセソン美季さんが来て、生徒たちの反応を確かめていた。
学校に訪れていたマセソン美季さん(筆者撮影)。
マセソンさんは1998年長野パラリンピック冬季大会で、アイススレッジ・スピードレースに出場し、1500メートルで世界記録を更新するなど金3、銀1のメダルを獲得している。今年4月からIPC教育委員メンバー、8月には国際オリンピック委員会(IOC)からも教育委員に任命されている。
「パラリンピックの教育はこれまで開催都市で行われるのが一般的でしたが、それだけではもったいない。全世界で利用できる教材が欲しいという構想は、IPC教育委員会で長年言及されていました。
2016年に日本財団パラリンピックサポートセンターが教材制作に資金提供、人的サポートをすることが決まり、開発が始まりました。まず国際版を作成し、日本語版は2017年4月に完成しました。パラリンピックの理念や歴史などを正しく伝え、IPCが伝えたいメッセージや、パラリンピックムーブメントを普及浸透させるのが目的です」という。
選手としての経験もあり「選手たちが伝えてほしいことを伝えたい」が前提にあった。意に沿わない、理解されていないと感じるメディアなどの情報もあるだろうし、そうした見方を変える意味もあったのだろう。


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